(※写真はイメージです/PIXTA)
憧れだった移住生活を開始も、想定外の「濃密な人間関係」に困惑
住地憧太さん(仮名・65歳)は、都内の中堅メーカーを定年退職したのち、妻の望さん(仮名・62歳)とともに念願の地方移住を果たしました。現役時代から「老後は自然豊かな地域で、家庭菜園でもしながらのんびり暮らしたい」と、夫婦で老後のスローライフについて話し合っていたそうです。
住地さんの預貯金は退職金を合わせて約4,000万円。年金は夫婦で毎月22万円受け取れます。二人は不動産サイトで地方の物件を探し、なんと数百万円という格安の一軒家を見つけました。この価格であれば住居費が抑えられ、物価の安い地方なら年金だけで悠々自適に暮らせると計算していました。
しかし、移住直後からその甘い見通しは崩れ去ります。住地さん夫婦を苦しめたのは、地域特有の濃密すぎる人間関係でした。
「都会のマンション暮らしが長かった私たちにとって、毎週末なにかしらの手伝いに駆り出されるのは予想外でした。のんびりした老後を思い描いていたのに、ちっとも休まりません……」
移住してすぐに、早朝からの草刈りや神社の清掃、地域の見回りなど、独自の集まりや作業への参加を強制されるようになったのです。
「プライベートがない」「もう限界」地方移住の理想と現実
ある日、憧太さんが持病の腰痛を理由に早朝の草刈りを休むと、徐々にご近所から冷ややかな態度をとられるようになったそうです。道ですれ違っても挨拶を返してもらえず、しまいにはゴミ捨て場の利用まで制限されるような状況に。
「郷に入っては郷に従えといいますが、限界があります。少しでも意見をいえばよそ者扱いされ、プライベートもありませんでした」
地域社会に溶け込もうと必死に合わせていた望さんも、次第に精神的に追い詰められていきました。ついには「もう限界……こんなところにはいられない」と泣き崩れたと語ります。
自然の豊かさや家の安さばかりに着目して、地方特有の人間関係のあり方を想定していなかった憧太さんは深く後悔しました。結局、住地さん夫婦は購入した家を手放し、わずか1年余りで都内の賃貸アパートへと戻ることを決断しました。