(※写真はイメージです/PIXTA)
「健康寿命」の壁と、膨らむ介護費用
住まいの修繕か、それとも介護資金の確保か。これは容易に決断できない難問です。
まず直視すべきは、自立して生活できる期間の短さでしょう。厚生労働省「令和3年 健康寿命の延伸と健康格差の縮小」によれば、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約12年もの差があります。この「不健康な期間」こそが、高額な住宅リフォームの恩恵を十分に受けられなくなるリスク期間だといえます。
また、リフォーム費用に大金を投じることで、将来の「施設入居」という選択肢が狭まる懸念もあります。生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」によると、介護に要する費用の平均は、一時的な費用(住宅改修等)で47.2万円、月々の費用で9.0万円となっています。
さらに民間施設への入居を検討する場合、有料老人ホーム等の入居一時金の平均は数百万円から数千万円にのぼり、月額利用料も20万円超となるケースが一般的です。
このようにみていくと、老後において大切なのは、固定資産(住宅)への過度な投資を控え、資産の「流動性(すぐに現金化できる状態)」を維持することだといえるでしょう。
改修は「点検」にとどめる
国土交通省の「住宅リフォームガイドブック」では、維持管理の重要性を説きつつも、大規模改修ではなく、まずは「建物の劣化診断」を行い、真に必要な補修を見極めることを推奨しています。
補助金の賢い活用
介護が必要になった際のバリアフリー化については、介護保険制度により、最大20万円(自己負担1〜3割)までの住宅改修費支給が受けられます。
老後の住まいでQOL(生活の質)を高めるためには、バリアフリー化、適度な明るさ、暖かい環境(浴室・脱衣所)の確保が不可欠です。一方で、こうした考えばかりが先行して、必要以上に住まいへ大金を投じるケースも珍しくありません。結果として老後資金が不足し、QOLが低下してしまっては本末転倒。住まいにどれほどお金をかけるべきか。自身の老後資金を今一度しっかりと確認し、場合によっては「お金をかけない」という決断も、賢い選択肢のひとつだといえるでしょう。