本業と副業のトリプルインカムで、30代にして世帯資産7,000万円に到達した多比さんご夫婦(仮名・30代)。彼らはマイホームや高級車といった「モノ」には執着せず、その資産を長期の海外旅行や子どもの体験学習など「家族の経験」へと惜しみなく注いでいます。モノよりも家族の経験や思い出にお金を使う、30代ファミリー層の事例を紹介します。
「マイホームに縛られたくなくて…」共働き+副業で〈世帯年収1,500万円〉の30代夫婦。〈資産7,000万円〉準富裕層が、住宅ローンを組まずに“優先したモノ” (※写真はイメージです/PIXTA)

本業と副業の「トリプルインカム」で資産形成を加速

「将来のことを話し合ったとき、マイホームに縛られるよりもいろんな世界を見たいねって意見が一致したんです」

 

当時を振り返りながら微笑むのは、夫の多比歩さん(仮名・38歳)と妻の未来さん(仮名・36歳)。ともに会社員として働きながら、副業として夫婦で共同のウェブメディアの運営を行っています。それぞれの本業収入に副業の収益が加わるトリプルインカムの状態で、世帯年収は約1,500万円に達しています。

 

「平日の夜は子どもを寝かしつけたあと、二人でリビングのテーブルに向かってメディアの執筆作業をしています。大変ですが、一緒に事業を育てる感覚が楽しいんですよね」と歩さんは語ります。

 

日々の生活費は歩さんの給与のみで賄い、残りの収入はすべて資産運用に回すというルールを徹底してきました。堅実な運用を続けた結果、30代にして世帯の金融資産は7,000万円を超え、準富裕層へと足を踏み入れています。

 

「車は中古のコンパクトカーですし、住まいも普通の賃貸マンションです。モノを所有することに、あまり魅力を感じないんですよね」

資産を「家族の経験」に変換するお金の使い道

生活水準を低く保っている多比さんご夫婦ですが、決して節約一辺倒というわけではありません。二人が惜しみなくお金を投じているのは、形に残らない経験です。

 

「マイホームを買って住宅ローンに縛られるより、若いうちに子どもと一緒に世界中を見て回りたいんです。毎年数週間は海外に滞在して、現地の文化に触れる経験は何物にも代えがたい資産だと思っています」と未来さんは語ります。

 

昨年の夏休みには、家族3人でタイに2週間滞在したそうです。「ただ観光地を回るだけでなく、現地の市場で子どもと一緒に値段交渉をしたり、地元のスーパーで食材を買って自炊したりしました。そういった生の体験は、日本の教室では学べない生きたお金の勉強になったと思います」

 

年に一度の長期の海外旅行や、子どもが興味を持った習い事、キャンプなどの野外体験にはまとまった予算を組んでいます。

 

金融資産をただ増やすことだけを目的とせず、家族のかけがえのない思い出や子どもの成長という経験に変換していくことが、多比さんご夫婦のお金の使い道のようです。

5,000万円以上の「準富裕層」へ到達する子育て世代の価値観

株式会社野村総合研究所が2025年2月13日に発表した最新の推計(2023年時点)によると、純金融資産5,000万円以上1億円未満の「準富裕層」の世帯数は403.9万世帯にのぼります。多比さんご夫婦のように、共働きに加えて副業からの収入の柱を持つことで、30代や40代といった子育て世代であっても、準富裕層に到達する世帯が着実に増えていると推測できます。

 

さらに、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」における20歳以上80歳未満を対象とした二人以上世帯のデータを参照すると、金融資産の平均保有額は1,940万円となっています。その内訳を見ると、預貯金が745万円、保険が364万円、その他金融商品が102万円であるのに対し、有価証券が727万円と、有価証券が預貯金とほぼ同水準にまで達していることが読み取れます。

 

従来のように預貯金を中心に資産を形成し、マイホームや高級車を所有することが豊かさの象徴であった時代から、価値観や資産形成の手法は大きく変化しているのかもしれません。

 

積極的に有価証券を活用して金融資産をしっかりと築きながらもモノへの執着を手放し、家族で共有できる時間や経験に投資するというスタイルは、これからの新しい子育て世代が求める生き方の一つであると考えられます。
 

[参考資料]

株式会社野村総合研究所「日本の富裕層・超富裕層の世帯数と純金融資産総額の推計(2025年)」

金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」