家族だから助けて当たり前――そのような言葉が、時として周囲の家族をも深刻な葛藤へと引き込むことがあります。ある男性のケースをみていきましょう。
「金で解決するしか…」〈月収55万円・59歳長男〉、実家で暮らす母と働かない妹に80万円渡して絶縁した理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

家族はどこまで支えるべきか

総務省の『労働力調査』や『国勢調査』を基にした分析によれば、35歳以上の未婚者のうち、親と同居している層は300万人規模で推移していることが示されています。特に40代後半から50代にかけての未婚層においても一定割合が親と同居しており、高齢の親と成人した子が同一世帯を形成する構造は例外的な事象ではありません。


もっとも、こうした世帯のすべてが経済的依存関係にあるわけではありません。しかし、無業や不安定就労の子が含まれるケースも指摘されており、いわゆる「8050問題」に象徴されるように、80代前後の親が50代前後の子を支える構図が社会的課題として可視化されています。


また金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)2025年』によると、前年から貯蓄が減ったという世帯は16.9%。60代世帯で19.8%、70代世帯で26.3%。貯蓄減少世帯に限り、その理由を尋ねると、「子どもへの援助(こどもの教育費用、結婚費用の支出があったから)」は全体の11.6%。60代に限ると5.7%、70代では2.4%でした。高齢者世帯ではかなり少数派ではあるものの、一定数は存在しており、親が老後資金を切り崩して子を支えるケースは、統計からも確認することができます。


法的な観点で見ると、民法第877条第1項が定める「兄弟姉妹の扶養義務」は、あくまで「生活扶助義務」です。これは自分の生活を維持した上で、余力がある範囲で行う二次的な義務であり、自分の家庭や老後資金を犠牲にしてまで、働かないきょうだいのために80万円を捻出する法的義務はありません。


行政の相談窓口でも、「お金を出し続けることが、本人の自立を妨げ、結果として全員が共倒れになる」というリスクが指摘されています。親が盲目的に子供を助けようとするのを止めることは難しく、自立している側が「これ以上は一円も出さない」とはっきり線を引くしか、連鎖を止める方法はありません。


ここで私たちが気づくべきは、「お金を断つことは、冷酷ではなく、自分を守るための当たり前の決断だ」ということです。80万円を「最後のお金」として渡し、絶縁を選ぶことは、ひどいことのように思えるかもしれませんが、それは自分の家族やこれからの生活を守るために、絶対に必要な「線引き」なのです。