(※写真はイメージです/PIXTA)
棺には入れ歯を入れられない…できるだけ顔を整える現場の工夫
多くの高齢患者さんがそうですが、生前のときのお顔と大きく変わってしまうんですね。その要因のひとつが、入れ歯の有無。原則、火葬時には貴金属を棺の中に入れてはいけません。そのため、入れ歯は入れないのがデフォルトとなります。ただ、そうすると口周りの様子が大変寂しくなります。頰がこけたような印象になるんです。そのため、ガーゼや綿球を口の中にうまく入れ込み、入れ歯が入っているようにみせることがあります。もちろん、限界はあるんですが。
それから、口が開いてしまう現象。筋肉の弛緩と硬直によるもので、骨格的にしかたのない部分でもあるのですが、どうしても口が開いてしまいます。
ただ、ご遺族としても本人の尊厳を守る意味でも、できるだけ口を閉じてあげたい。そのほうが、キリッとした印象になりますし、あたかも眠っているように見えるからです。そのため、顎の下にフェイスタオルを丸めてクッと固定しておくことがあります。
そのまま葬儀会社に引き渡すことも。一応、顎が開かないように、顎バンドなる商品も出ているんですが、わたしはあまり好みではありません。
亡くなった方の顔周りを白いひらひらレースが1周しているって、生前のイメージと合っていたらいいですけど、合ってなかったらなんだこれ?ってなります。それに、むくんでいるご遺体だとバンドを外したときに跡が残ってしまって、これまたなんだこれ?ってなるんですね。ご遺族の希望があれば使いますが、バンドをつけた姿をみたご遺族は「やっぱりそれ、使わなくていいです」とおっしゃることがほとんどです。
合掌バンドも然り。これは各々の倫理観によりますが、亡くなった人の身体を縛るということに抵抗を感じる人が多いからだと思います。それなら、合掌させずに自然な体勢でいいです、というご遺族も多いです。
土葬文化のアメリカ製が多い「ペースメーカー」は火葬を前提に作られていない
本来、医師の処置時に摘出するのが望ましいと言われていますが、先に述べたように摘出したあとの創傷管理も難しいのがペースメーカーです。ペースメーカーとは、心臓のリズムをつけるために、生前に体内に埋め込んだ医療機器になります。そのため、多くの医療機関で摘出しないまま火葬場に運ばれている患者さんが多いように思います。
ただ、火葬場スタッフからすると、ペースメーカーって危険でしかないんです。アメリカで作られているものが多いんですが、あちらは土葬の文化が根強いです。ということは、ペースメーカーは火葬を前提に作られていないんですね。そのため、火葬時には爆発することもあるそうです。火葬スタッフが怪我をしそうになったという報告も、なされています。
高島 亜沙美
看護師/保健師