「最期の身支度」を美しく整え、旅立ちを助けるプロ。あの名作映画のような光景を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、病院で行われるこの処置は、実は健康保険がきかないことをご存じでしょうか。本記事では、高島亜沙美氏著・西智弘氏監修『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)をもとに、映画のイメージとは少し違う、病院でのエンゼルケアの真実を解説します。
死後の「お化粧と着替え」は保険適用外で5万円~10万円…名作映画のように美しく整えるケアが、病院では「完全自費」になる理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

人の死後、挿入していた点滴の針や人工呼吸器を抜去していく

死の兆候と時間の確認が済んだら、一度ご家族に退室いただき、医師と看護師で挿入されていた管類を抜去していきます。見学したいというご家族も稀にいますが、ほとんどの人にとっては見ていて気持ちのいいものではないので、ご退出いただくことが多いですね。

 

あとは、血液や体液が空気中に飛散するかもしれないので、感染管理的にもあまりおすすめしていません。わたしたちも、処置の際はマスク、ゴーグル、手袋、エプロンを着用します。管を皮膚に縫いつけていた場合は、医師がハサミで医療用の糸を切断していきます。他にも、人工呼吸器や脳室ドレーン、中心静脈カテーテルなども医師が抜去します。看護師は、下記のような処置を担当します。

 

●点滴の針の抜去

●心電図モニターのテープを剝がす

●膀胱尿道カテーテルの抜去

●傷や創の手当て

 

医師が挿入したものは医師が、看護師が挿入したものは看護師が抜去、という感覚です。以前は、鼻や肛門から体液が出ないように綿球やガーゼを詰めることもありましたが、なるべく自然な形でお送りするという理念の下、詰めものをしない病院もあるそうです。

 

わたしの場合、以前勤めていた病院は詰めものあり、いまの病院は詰めものなしです。ただ、詰めものなしの病院でも、患者さんの療養経過、状態によっては嘔吐や下痢、その他体液の流出が懸念されることもありますので、詰めものをする場合もあります。移送中に汚れてしまうのは、ご本人にとってもご遺族にとってもいいことではありませんからね。

 

それから、傷口が開いている人や人工肛門がある人は医師により閉じる処置をすることがあります。そのまま放っておくと、体液が漏れてきたりにおいが漂ってきたりしてしまうためです。

 

看護師になっていろんなにおいを嗅いできましたが、個人的には亡くなった方の身体から出てくるものほど凄まじいものはないと思っています。ただ、亡くなっている人をいくら処置しても、傷口が塞がることはありません。細胞が生きていないため、治ることがないからです。

 

そのため、物理的に閉じてくるくらいのイメージでちょうど良いと思われます。体液が出てきてもいいように、傷口に分厚くガーゼを当てて葬儀社さんに引き渡すこともあります。