「最期の身支度」を美しく整え、旅立ちを助けるプロ。あの名作映画のような光景を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、病院で行われるこの処置は、実は健康保険がきかないことをご存じでしょうか。本記事では、高島亜沙美氏著・西智弘氏監修『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)をもとに、映画のイメージとは少し違う、病院でのエンゼルケアの真実を解説します。
死後の「お化粧と着替え」は保険適用外で5万円~10万円…名作映画のように美しく整えるケアが、病院では「完全自費」になる理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

しっかりした「お化粧」は、お通夜と告別式にとっておく

映画「おくりびと」の影響からか、お化粧までしっかりやってくれると思っている人もいますが、実は病院内でのお化粧は最低限。あれは、プラスアルファのケアなんです。

 

どうして?と思われますよね。お化粧は、ご本人をきれいに見せるためのもの。となると、亡くなったあと一番きれいに見せたいときって、いつでしょうか? お通夜と告別式ですよね。ここが、一番きれいであってほしい。できるだけ、生前に近い容貌であってほしいわけです。

 

ただ、亡くなってから葬儀と告別式には必ず数日のタイムラグが発生します。日曜が結婚式だからって、金曜からお化粧している人なんていませんよね。お肌が荒れちゃう。ご遺体も一緒です。そのときにどんなにきれいにお化粧しても、葬儀まではもちません。

 

肌の色が変わったり、顔の筋肉が下がってきたりと、筋肉が硬直と弛緩を繰り返すのでどうしても変化してしまうんです。なるべく良い状態で参列者に見てもらうためにも、お化粧など「よりきれいに見せるケア」は葬儀社さんにお願いすることのほうが多いように思います。

 

わたしたち看護師は、生前の人間のケアのプロであっても、ご遺体管理のプロとは言えないんです。

エンゼルケアは医療保険適用外…5万円~10万円の費用がかかる

ここまでのケアをエンゼルケアと言います。日本語だと死後処置になりますが、死後処置という言葉を仕事で使ったことはありません。響き的にもエンゼルのほうが、患者さんを天国へ委ねられるような気がして、個人的には好きです。

 

この一連のケア、かなりドライに聞こえるでしょうが、保険適用の医療行為ではありません。保険適用となる医療行為は、あくまでも生きている人間に施すもので、亡くなってしまったご遺体に施すケアは算定外となるんです。そのため、エンゼルケアは自由診療枠のような扱いになっています。

 

医療機関によって価格はさまざまで、いまわたしが勤めている病院は5万円くらい、前に勤めていた大学病院では10万円くらいのコスト算定でした。

 

ご遺族も、亡くなったすぐあとに会計するのは稀で、葬儀などが落ち着いてから再び病院に来て支払いをすることがほとんどです。この段階で、なんか今回の医療費、高くない?と思っても、死後処置の欄を見て納得されている方が多いように思います。あれは自費なのねって。

 

エンゼルケア、高くない? なんていうとバチが当たりそうな国民性も相まって、ここでクレームが入るような事例にわたしは出会ったことがありません。ここから先は、もう少し専門的な話をしていきますね。