「退職金と年金があれば、なんとかなるだろう」そう高を括っていた現役時代の自信が、老後になって崩れ去る――。そんな「老後破綻」予備軍が、実は大企業勤めのエリート層に増えています。本記事では石井さん(仮名)の事例から、FP dream代表FPの藤原洋子氏がさまざまなライフイベントと同時に資産をつくる方法について解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
「食も細くなるし、付き合いも減るし、老後は大してお金がかからない」はずが…退職金2,000万円・年金月27万円の70歳元部長、想定外の老後破綻で漏らした「私は算数すらできない」エリートの悲哀 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後に思い知る“準備しなかった代償”

「現役時代、もっと貯金しておけばよかったとか、そんな後悔すら贅沢に感じます。いまはただ、明日の食費のために体を動かすだけです」

 

伏し目がちにつぶやく石井さんの現在の月収は、警備の仕事で得る約12万円。年金と合わせても、妻の施設費用と自身の生活費、娘たちへの小遣いを払えば手元にはほとんど残りません。立ちっぱなしの仕事は、70歳の体に想像以上にこたえます。「働けるだけありがたい」と自分に言い聞かせながらも、心の奥には複雑な感情が渦巻きます。本来なら、悠々自適の老後を送っているはずでした。ところが現実は、生活費を補填するための労働なのです。

 

石井さんが語る「準備しなかった代償」とは、単に金銭的な困窮だけではありません。「選択肢がなくなること」の恐怖です。 体力が衰え、膝や腰を痛めていても、働かなければ食べていけない。これが、準備を怠った人が直面する「残酷な終着駅」の一つなのです。

 

長寿化が進むいま、90歳を超えて生きることは珍しくありません。医療費、介護費、住宅修繕費など、想定外の支出は必ず発生するでしょう。さらにインフレが進むなか、預貯金中心だった石井さんの資産価値は、実質的に目減りし続けています。

 

「老後破綻は、浪費家だけの話だと思っていました。堅実に働いてきた私は大丈夫!と錯覚していたようです。私は算数で必要な老後資金を計算することすらできない人間だったんですね……」

 

老後の労働は“生きがい”であれば幸福ですが、“生活のため”に選ばざるを得ない労働は、重みが異なります。

老後資金は「足し算」ではなく「引き算」

石井さんが陥った誤算は、「足し算」で老後を考えてしまったことです。

 

退職金:2,000万円

年金:月27万円

貯蓄:1,000万円

 

合計すれば十分にみえます。ですが、老後資金は足し算ではなく「引き算」と「時間」で決まります。月40万円の生活費が必要なら、毎月13万円の赤字。年間156万円、10年で1,560万円、20年で3,120万円。足りない分は、労働で賄うしかありません。老後に必要と考えられる資金の項目を「あれもこれも」と洗い出したのちに、「あれかこれか」を決断しましょう。