「死ぬときは苦しまず、枯れるように逝きたい」「機械につながれてまで生きたくない」――。そんな言葉を口にする親は少なくありません。子世代もまた、その意思を尊重しようと心に決めたとしても、いざ死の淵に立ったとき、あらかじめ交わした約束が果たされないこともあります。ある家族の経験を見ていきます。
悔やんでいます…ICUでみた79歳父の涙に、55歳長男「延命治療」を決断。父逝去から5年経っても仏壇を前に後悔を口にするわけ (※写真はイメージです/PIXTA)

延命治療を望むか/望まない…意思決定ができないとき、誰が決めるのか?

厚生労働省『令和4年度 人生の中末期における医療・ケアの決定に関する意識調査結果』によれば、人生の最終段階における医療・ケアについて、あらかじめ家族等や医療・介護関係者と詳しく話し合ったことがある人は、29.9%(「詳しく話し合っている」、「一応話し合っている」の合計)と、3割ほどに留まっています。


また、重要だとは思いつつも話し合っていない理由として、「話し合うきっかけがなかった」が最も多く、次いで「知識がないため、何を話し合っていいかわからないから」が続いています。さらに人生の最終段階で意思決定ができなくなったとき、自分の医療・ケアに関する方針を決めてほしいと思う人、決めることができると思う人は、圧倒的に「家族」が多く、92.3%に上ります。

 

一方で、「どこで最期を迎えたいかを考える際に、重要だと思うこと」として、最も多かったのが「家族等の負担にならないこと」(71.6%)。家族の負担にはなりたくないと思いつつも、意思決定できなくなった際には家族に決めてほしいと決断を委ねる……。何とも複雑な心境を垣間見ることができます。

 

【延命治療、望む/望まない】

あなたが病気で治る見込みがなく、およそ1年以内に徐々に、あるいは急に死に至ると考えたとき

■抗生剤を飲んだり点滴したりすること

望む…57.2%、望まない…12.4%

 

■口から水を飲めなくなった場合の点滴

望む…56.2%、望まない…18.8%

 

■口から十分な栄養をとれなくなった場合、首などから太い血管に栄養剤を点滴

望む…19.4%、望まない…46.5%

 

■口から十分な栄養をとれなくなった場合、鼻から管を入れて流動食を入れる

望む…11.8%、望まない…54.5%

 

■口から十分な栄養をとれなくなった場合、手術で胃に穴を開けて流動食を入れる

望む…7.6%、望まない…63.3%

 

■呼吸ができなくなった場合、気管に管をいれて人工呼吸に繋げる

望む…11.6%、望まない…57.3%

 

■心臓や呼吸が止まった場合の蘇生処置

望む…20.7%、望まない…53.8%

 

※選択肢に「わからない」や「無回答」があるため、合計しても100%にはならない

 

医療現場では「本人の最善の利益」が優先されますが、意識がない、あるいは判断能力が低下した状態での「本人の意思」をどう捉えるかは曖昧です。「何もしない」という選択は、家族にとっても医師にとっても、心理的に「見捨てた」という重圧を与えかねないでしょう。だからこそ、終末期について、より深く、家族と話し合っておくことが重要なのです。