年金月30万円、資産6,000万円。勝ち組人生を歩んできた76歳主婦でしたが、妹から届いた「孫6人の年賀状」を見て、思わず胸がざわつきました。お金も地位も、自分のほうが上のはず。それなのに、なぜ——。夫の定期検診をきっかけに浮かび上がったのは、資産では埋められない老後の不安でした。未婚の子を持つ親世代が、今、静かに直面し始めている現実とは? FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私のほうが全部「上」なのに…都内在住・資産6,000万円・年金月30万円の76歳主婦。勝ち組人生のはずが、地方で暮らす“普通の妹”に抱く「ただならぬ感情」【FPの助言 】
資産はあっても、決断の行き先が見えない…未婚化が進む日本で、親世代に広がる静かな課題
美智子さんが感じた不安——それは、お金では解決できないものでした。
老後資金は十分にあります。最終的な相続人は一人息子だけで、「争族」の心配もありません。数字だけを見れば、理想的な状況です。それでも、問題は残ります。
息子はすでに都心のマンションで生活が完結しており、実家に戻る必然性はありません。夫の両親の代から守ってきた広い家は、今後、誰も住まないまま残る可能性があります。売るのか、残すのか、手放すのか——その判断を、誰が、いつするのかは決まっていません。
墓についても同様です。妹の家では「継ぐ人」が決まっていますが、美智子さんの家では、その話題はタブーでした。結婚の予定もなく、将来も一人かもしれない息子に、墓を守る責任を押しつけたくない。そう考えて、話題にすることを避けてきました。しかし、避けてきた話題は、消えたわけではありません。
こうした状況は、美智子さんの家だけのものではありません。2020年(令和2年)の国勢調査によると、50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合(生涯未婚率)は、男性で28.25%、女性で17.81%に達しています。50歳の男性の約4人に1人が、結婚経験がない計算です。
未婚の子を持つ家庭で、子どもは自立しており、親も元気で、資産もある。そんな場合、「まだ考えなくていい」と、むしろ判断を先送りしやすいのです。
けれども、「まだ考えなくていい」と先送りした結果、何をどう整理すればいいのか、その道筋が見えないまま時間だけが過ぎていく——それこそが、見えにくい老後のリスクなのです。