かつては「中流」と呼ばれた世帯年収ボリュームゾーンにありながら、高騰を続ける教育費、重くのしかかる住宅ローン、そして止まらない物価高が、彼らの生活を容赦なく蝕んでいます。なぜ今の日本で「普通」を維持することがこれほどまでに困難になったのか、その構造的な要因を考えていきます。
もう無理だ…「年収700万円・48歳サラリーマン」の悲鳴。平均年収でも生活はカツカツ、日本で進む「中間層の消滅」 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯金ができない…「普通」を維持するための綱渡り

都内のIT企業で働く佐々木健一さん(48歳・仮名)。年収は約700万円と、同年代の男性正社員の平均的な水準です。妻の美由紀さん(48歳・仮名)もパートで月10万円ほど稼いでおり、世帯年収としては850万円を超えます。一見、余裕があるように見える数字ですが、現実は「毎月が赤字か、良くてトントン」だといいます。

 

【年齢別・男性正社員の平均年収】

20~24歳:3,583,900円

25~29歳:4,537,500円

30~34歳:5,248,400円

35~39歳:5,897,800円

40~44歳:6,408,700円

45~49歳:6,837,700円

50~54歳:7,041,400円

55~59歳:7,242,100円

60~64歳:5,321,800円

出所:厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』

 

「一番の重荷はやはり教育費です。大学生の長男と高校生の長女がいますが、塾代や学費、定期代だけで月に20万円近くが飛んでいきます。これに加えて住宅ローンが15万円。食費も光熱費も上がり続けている。削れるところはもうありません」

 

佐々木さんは、自身のランチ代を500円以内に抑え、飲み会もほとんど断っていると話します。

 

「私は就職氷河期ど真ん中ですから、若いころは若いころで大変でした。ITバブルが弾けて、リーマンショックが起きて……。でも、50代くらいになれば生活に余裕が出るものだと思っていました。ところが現実は、昇給の幅よりも社会保険料や税金の負担増のほうが大きく、手取りはほとんど増えていない。むしろ昔より生活水準を下げているのに、生活は苦しくなる一方です。真面目に働いているのに老後の貯金すらままならない。何のための人生なのか……」

 

妻の美由紀さんも、スーパーでの買い物のたびに溜息をつくといいます。

 

「数年前ならカゴ一杯買っても8,000円くらいだったのが、今は1万円を軽く超えます。子どもたちには不自由させたくないから、自分たちの服や化粧品は二の次。夫の退職金もローンの返済で消えてしまいそうです。私たち、至って“平均的”だと思うのですが、みんなこんなに苦しい思いをしているのでしょうか」