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「期待しても無駄だった」…築45年、住宅の維持費と固定資産税が年金家計を圧迫
神奈川県内の郊外に位置する住宅街。1980年代に整備されたこのエリアで、木村和夫さん(76歳・仮名)と妻の節子さん(72歳・仮名)は、35年前に注文住宅を建てました。購入価格は土地と建物合わせて約6,000万円。和夫さんは当時の資金計画を次のように振り返ります。
「当時は住宅金融公庫の金利が5%前後で、銀行の変動金利は8%近くありました。私は公庫から3,000万円を30年返済で借り、残りは頭金と親からの援助で賄う――当時としては、標準的な住宅ローンの組み方だったかと思います。ローンさえ終われば、あとは年金だけで生活できると考えていました」
しかし、実際の収支は想定通りには進みませんでした。現在、和夫さんの年金受取額は、公的年金と企業年金合わせて月約22万円。日常生活を送るには十分なはずでしたが、住宅の老朽化が家計の計算を狂わせたのです。
「5年前から屋根の雨漏りが始まりました。業者に点検してもらうと、屋根全体の葺き替えと外壁の塗装で300万円かかると言われましたが、私たちにそんな貯金はありません。結局、数万円で済む応急処置を繰り返していますが、強い雨が降るたびに家の中に水が漏れてきます」
さらに、地域の地価下落も進んでいます。駅からバス便の住宅地は現在、空き家が目立ち、最寄りのスーパーも撤退しました。和夫さんは管理の負担を減らすため、マンションへの住み替えを検討し、不動産会社に相談したといいます。
「担当者からは、『建物は古すぎて価値がありません。それどころか、中古物件として出すにはリフォーム代が膨大になるため、買い手はつきません。土地として売るにしても、更地にしなければ検討さえしてもらえない』とはっきり言われました。このあたりは道が狭く重機が入りにくいため、解体費用だけで200万円から300万円はかかります。売却価格からそれを差し引くと、手元に残る金額はほとんどない。下手をすれば持ち出しになると聞いて、どうしたものか……」
売却できない以上、この家に住み続けるしかありません。しかし、住み続ける限り固定資産税の支払いや、修繕費用が発生し続けます。
「家が資産だと思っていたんですが、この家の場合、手放すことができない重荷になっています。今さら、どうしようもありません。正直にいえば、これなら賃貸住宅のほうがずっと楽だったと思います」