「出世には興味がない」「仕事よりプライベートを優先したい」部下からこう言われたとき、上司はどう返すべきでしょうか? 「やる気がないのか」と嘆くのは簡単です。しかし、ハラスメントを恐れて踏み込んだ会話ができず、かといってかつてのような「飲みにケーション」で腹を割って話すこともできない……。そんな“八方塞がり”の状況に頭を抱える上司が増えています。実は、部下のこうした言葉を額面通りに受け取るのは危険です。その裏側には、本人さえ言語化できていない「本当の願望」が隠れていることもあって……。本記事では、上林周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)より、現代のリーダーに求められる「共感型マネジメント」の極意を解説します。
飲み会NG、ハラスメント恐怖で八方塞がり…部下の「出世には興味がない」という言葉を、上司が真に受けてはいけないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

日本球団に入るつもりがなかった大谷翔平選手を説得した栗山英樹監督のアプローチ

メジャーリーガーの大谷翔平選手が、日本でプロになったときのエピソードを思い出してください。当初大谷選手はメジャー志望を公言していて、日本の球団には入るつもりがないとされていました。それでも当時の日本ハム・栗山英樹監督は粘り強く大谷選手と対話を重ね、大谷選手の日本ハム入団が実現しました。

 

このときの「メジャーに挑戦したい」は大谷選手の顕在ニーズです。対して日本ハム側がアプローチしたのは「世界一の野球選手になる」「選手としてもっともっと成長する」という、より深層にある大谷選手の目的でした。その目的に向かうストーリーを伝えたのだと思います。つまり表面上の言葉に囚われることなく、本人のインサイトを真剣に考えて共感することで、心を動かせたのではないでしょうか。

 

これは私なりの解釈ですが、私たちのマネジメントにも同じことがいえると思います。まだ経験の浅い若手が「いつか独立したい」と考えていることもあるでしょう。つい「いやいや、まだ目の前の仕事も十分にできないのに」などと、自分の論理で説得にかかってしまいがちです。そうではなくて、必要なのは「よし、独立を目指そう」という共感と、なぜ独立なのかというインサイトの解明です。

 

説き伏せようとすれば反発を招きます。しかし共感は対話を促し、対話は信頼を生みます。たとえその先に転職や独立があっても、それを否定してはいけません。こんなふうにして互いに理解し合うことで、メンバーは「なぜこの職場で働くのか」という意思を持ち、主体性が生まれるのです。

 

社員やメンバーに主体性を「持たせる」のではなく、彼らがどんな思いで働いているのかを理解し、その感情に応えることで、自然に主体性が引き出される。それこそが、共感型マネジメントが目指す姿です。

 

 

上林 周平

株式会社NEWONE

代表取締役