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統計が示す「高齢者の住み替え」と孤立の実態
内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、高齢者の住み替え意向がある人の割合は、およそ3割(「住み替え意向あり」と「現時点ではないが状況次第で検討したい」の合計)にのぼります。
また、住み替えの意向を持つ理由としては「健康・体力面での不安」がトップで24.8%。次いで「自宅が住みづらい」(18.9%)、「自然豊かな環境で暮らしたい」(10.3%)、「買い物が不便」(10.2%)と続きます。
さらに、住み替え先に期待することとしては「買い物が便利なこと」が最多で、その後に「医療・福祉施設が充実していること」「交通の便が良いこと」が挙げられています。
駅チカの利便性を手に入れた佐藤さん。一見すると住み替えの成功例に思えますが、老後の暮らしに「絶対」はありません。
マンション居住には、以下のようなメリットがあります。
・駅や商業施設が近く、日常の移動が楽である
・バリアフリー設計で身体への負担が少ない
・管理人やオートロックによる防犯上の安心感がある
しかし、そうしたメリットの裏には、高齢期だからこそ注意したい以下のような落とし穴も存在します。
管理費や修繕積立金などの固定費がかかり続ける
年金暮らしにとって、毎月数万円単位で発生する固定費は大きな重荷です。特に築年数が経過すると、修繕積立金が増額されるケースも少なくありません。
修繕や建て替えの際に、居住者間でトラブルになることも
老朽化したマンションの維持管理には住民の合意形成が不可欠ですが、世代間の価値観の違いや経済状況の差から、必要な修繕が進まないリスクがあります。
ペット・リフォームなどの制限が多く、自由度が低い
戸建てでは当たり前だったことが、管理規約によって制限されます。これがストレスとなり、精神的な健康を損なう要因にもなり得ます。
また、内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果』によれば、現在の住まいに満足している人の割合が高い一方で、「近所付き合い」については、集合住宅は戸建てに比べて希薄になる傾向が示されています。特に都市部のマンションでは「挨拶をする程度の付き合い」が最も多く、困ったときに助け合える関係を築くことが困難な現状があります。
もちろん、佐藤さんが不安視している「孤独死リスク」は戸建てでもゼロではありません。しかし、周囲との繋がりが絶たれやすい駅チカマンションへの住み替えによって、そのリスクが表面化したといえるでしょう。
高齢者の住み替えにおいては、利便性だけでなく「その場所でどのような人間関係を維持できるか」という視点も考慮し、納得のいく選択をしたいものです。