(※写真はイメージです/PIXTA)
「便利さ」の裏側に潜んでいた、駅チカマンションの冷酷な現実
ターミナル駅から徒歩3分の分譲マンションに住む、佐藤健二さん(75歳・仮名)。遡ること3年前、長年住み慣れた郊外の戸建てを売却し、現在のマンションを現金で購入しました。当時の決断に、迷いはなかったと振り返ります。
「50年住んだ家は階段の上り下りもきつく、庭の手入れもしんどい。そんなとき、ポストに駅前に建つマンションのチラシが入っていたんです。妻も亡くなり、私ひとりですから、この家に固執することはない。それよりも、交通の便がいいマンションに住み替えるほうがラクだなと思ったんです」
売却益で手に入れた新生活。当初は、駅地下のスーパーで買い物を楽しみ、洗練されたエントランスを通るたびに「住み替えしてよかった」とかみしめたと語ります。しかし、すべてが想像通りというわけではありませんでした。
「昨今の物価高で、管理費や修繕積立金が値上がりしました。引っ越してきてわずか3年なのに……月17万円の年金で対応していけるのか不安です」
さらに驚いたのが、希薄なコミュニティだったと漏らします。
「マンション暮らしは初めてだったので、隣近所に誰が住んでいるのかわからないことにビックリしました。以前の家では近所はみんな顔なじみで、庭掃除をしていれば誰かが声をかけてくれた。でもここでは、エレベーターで会っても会釈程度。居住者以外が紛れ込んでいても、気づけないですよね」
そんな佐藤さんを悲劇が襲ったのは、昨年の冬のことです。深夜、浴槽から立ち上がろうとした際、足に力が入らず転倒。腰を強打し、その場から一歩も動けなくなってしまったのです。
「スマートフォンは居間に置いたまま。全裸で冷たい床に横たわり、叫んでも誰にも届かない。頭をよぎったのは、このまま誰にも気づかれず腐敗していく自分の姿でした。3時間ほどかけて、這いつくばるようにして脱衣所までたどり着き、なんとか救急車を呼びましたが、あのときの恐怖は忘れられません」