子どもや孫の力になりたいという親心は尊いものですが、度を越した援助が自身の生活を脅かすケースは少なくありません。特に定年後の限られた年金から多額の仕送りを続けることは、老後資金の枯渇に直結するリスクの高い行為です。良好な親子関係を維持しているつもりでも、お金が絡むことでその信頼が脆くも崩れ去ることもあります。ある夫婦のケースから、高齢期のお金の線引きについて考えます。
話が違うじゃない! 年金月25万円・75歳夫婦、孫のためにと「月10万円」の仕送りを続けたが……息子夫婦の衝撃の裏切りに老後崩壊 (※写真はイメージです/PIXTA)

「孫の将来のためなら」と無理を重ねた、ある老夫婦の誤算

「まさか、自分たちの善意がこんな形で踏みにじられるなんて。これまでの5年間は何だったのでしょうか」

 

中堅メーカーで働いていた佐藤博さん(75歳・仮名)。現在は妻の和子さん(72歳・仮名)と二人で暮らしています。夫婦合わせた年金受給額は月に約25万円。現役時代の蓄えもあり、本来であれば穏やかな老後を過ごせるはずでした。

 

きっかけは5年前、ひとり息子である健二さん(46歳・仮名)から受けた相談でした。「息子の教育に力を入れたいが、今の給料では塾代や私立中学の学費が厳しい。どうか助けてほしい」という切実な願い。初孫を溺愛していた佐藤さん夫婦は、二つ返事で承諾しました。

 

「孫の亮太(仮名)のためだと思えば、多少の節約は苦になりませんでした。月に10万円、年金が入るとすぐに息子の口座へ振り込む生活を5年近く続けました」と和子さんは振り返ります。

 

月25万円、手取りにすると22万円ほどの年金。そこから10万円を仕送りに回せば、夫婦の手元に残るのはわずか12万円です。そこから光熱費や食費、医療費を捻出するのは容易ではありません。佐藤さん夫婦は極力、趣味や娯楽を控えるようになりました。自分たちの老後のこともあるため、質素倹約を心がけ、身を削るような生活を続けてきたのです。

 

しかし、その献身的なサポートは、最悪の形で裏切られることになります。昨年、佐藤さんは孫の亮太さんが第一志望の中学校に合格したという知らせを待ちわびていました。しかし、いくら待っても連絡がありません。デリケートな話題だからと聞くのを控えていましたが、しびれを切らして電話をかけました。

 

電話に出たのは亮太くん。そこで佐藤さんは耳を疑うような事実を知ります。

 

「亮太に『受験はどうだった?』と聞くと、怪訝な声で『受験なんてしてないよ』と言われたんです」

 

健二さんを問い詰めると、観念したように白状しました。「友だちと同じ中学校に行きたいというから、塾にも行っていないし、受験もしていない」というのです。

 

では、毎月送っていた10万円の行方はどこへ。健二さんは悪びれた様子もなく、「さぁ」と言うだけでした。どうやら、毎月の仕送りは日常の浪費に使われ、よくわからないうちになくなっていた……というのがこの一件の顛末でした。

 

「血の滲むような……と、大袈裟なことはいいませんが、私たちはこの5年間、孫のために頑張ってきた。そのすべてが、よくわからないまま消えていたと思うと、本当にバカらしくて笑えます」