「健康寿命」は2022年の推計で女性が75.45歳、男性が72.57歳。いわゆる老後といわれる期間がどんどん長くなっていくなか、定年後は穏やかにゆっくりと過ごすか、それともいつまでも現役時代のようにアグレッシブに生きるか、全サラリーマンの課題かもしれません。
「使えねえんだよ、金食い虫が!」退職金3,500万円・60歳元部長、20歳下の上司から全社員の前で罵倒され絶句。再就職先で待ち受けていた「過酷な現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

高年齢者雇用の現実…年長者と若手・中堅層の間に横たわる「高すぎる意識の壁」

厚生労働省『令和7年 高年齢者雇用状況等報告』によると、65歳までの雇用確保措置を講じている企業の割合は99.9%に達しました。また、雇用確保措置を実施済みの企業に対し、その内容を聞いた結果、「定年制の廃止」が3.9%、「定年の引き上げ」が31.0%、そして圧倒的に多いのが「継続雇用制度の導入」で65.1%となっています。

 

制度上は「高齢者が働ける環境」が整っていますが、働くシニアを取り巻く環境は課題が山積みです。リ・カレント株式会社『働くシニア社員の本音調査2025』によると、人生100年時代という言葉に対して、働くシニアの75.4%が「どんより(マイナスな印象)」と回答。また、働くうえでのストレス要因として、第2位に挙げられているのが「人間関係」(36.7%)です。佐藤さんのように意欲を持って入社しても、現場の人間関係によって、その意欲が急速に削がれていくケースは珍しくありません。

 

一方で、受け入れる側の若手・中堅層もまた、強いストレスを抱えています。サイボウズ株式会社『年下の上司に聞く「年上の部下へのマネジメント」調査』によると、年下上司の24%、約4人に1人が「仕事がやりにくい」と回答。特にネックになっているのが「固定化された価値観」です。年下上司の実に67.6%が、「年上の部下の価値観は、なかなか変わらない」と答えています。

 

【年下の上司で苦労したこと(自由記述)】

固定観念があり、長年染み付いた独自のやり方などを変えるのに苦労した

昔のやり方を通されたり、改定情報が入っていなかったりで、話が遠回りになる

 

この「固定化した価値観」こそが、現場で「老害」と称されてしまう最大の要因です。かつての管理職というプライドや、従来の仕事の進め方に固執する姿勢は、スピード感を重視する現代の企業において、上司側からすれば「改善の余地がない障害」として映ってしまうもの。

 

いかなる理由があろうとも、田中部長が行ったような暴言や人格否定は、断じて許されるものではありません。厚労省の定義するパワハラの「精神的な攻撃」に該当し、企業の管理責任も問われる事態です。その一方で、現場に目を向けると、変化を受け入れられないシニア層に対する、現場の苛立ちが限界に達していたという側面もあったのかもしれません。

 

[参考資料]

リ・カレント株式会社『【意識調査】働くシニア世代の本音、"人生100年時代"に「どんより」印象7割超え』

サイボウズ株式会社『年下の上司に聞く「年上の部下へのマネジメント」調査』