日本の公的年金制度は、老後の生活を支える重要な基盤ですが、自営業者などが受給する「老齢基礎年金」のみに頼る世帯では、昨今の物価高騰や光熱費の上昇が死活問題となっています。特に寒さの厳しい冬場は、暖房費を捻出できず、健康を損なうリスクを抱えながら生活する高齢者も少なくありません。ある男性のケースをみていきます。
「これで少しは、暖かく過ごせます…」年金月6万円、66歳。冬の寒さに震える困窮のなか、年金機構から届いた「緑色の封筒」に涙したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「暖房をつけるのが怖い」……月6万円の年金で暮らす66歳男性の窮状

「まさか、自分がこんなに寒さに震える老後を送ることになるとは、思ってもみませんでした」

 

都内にある築40年超の木造アパート。窓からの冷気が容赦なく室温を奪うなか、佐藤和夫さん(66歳・仮名)は、古びた厚手の毛布を肩から羽織り、小さくなって座っていました。佐藤さんは長年、個人経営の飲食店を営んできましたが体調を崩して引退。現在は、月6万円の老齢基礎年金が唯一の収入源です。

 

家賃3万円を支払い、健康保険料や介護保険料を差し引くと、手元に残るのはわずかな金額です。足りない分は心許ない貯蓄を取り崩して暮らしています。

 

「一番きついのは冬です。このアパートは隙間風がひどくて、外にいるのと変わらないくらい冷えます。でも、電気代が怖くてエアコンはつけられません。お湯を沸かすガス代も節約するために、お風呂は沸かさず、タオルで体を拭いたりとか。あとはずっと、この毛布にくるまって過ごしています」

 

昨今の食料品の値上げも、佐藤さんの生活をさらに追い詰めました。スーパーの閉店間際に行き、半額になったパンや見切り品の野菜を探すのが日課です。

 

「いつも、肉や魚には手を出せない。普段は納豆と豆腐と、あと見切り品の野菜。ちょっと変色していても十分食べられる……でも本当、何のために働いてきたんだろうと、涙が出そうになる」

 

そんな限界に近い生活を送っていた佐藤さんのもとに、昨年末、日本年金機構から一通の「緑色の封筒」が届きました。最初は「また何か支払いの督促か」と身構えたといいます。しかし封を切り、中身を確認した佐藤さんは、思わず涙したといいます。 それは「年金生活者支援給付金」の振込通知書。

 

「毎月、5,000円ちょっとの金額が加算されると書いてありました。たった5,000円かもしれませんが、本当にありがたい。これで少しは暖かく過ごせるかもしれません」

 

佐藤さんの生活が劇的に豊かになるわけではありませんが、届いた通知は、社会から見捨てられていないという、小さな希望の光になったようです。