(※写真はイメージです/PIXTA)
統計から見る「高所得層の老後破綻」という罠
高年収の人でも、老後に対して無計画というケースは珍しいことではありません。金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、金融資産*を保有している世帯は全体の75.3%でした。
*将来の生活設計や資産運用を目的として保有する、流動性の低い(日常使いではない)金融商品全般
下記の通り、収入が上がるほど金融資産の保有世帯の割合は増えていきますが、年収1,200万円以上の世帯でも10世帯に1世帯は余裕がないという状況です。
【年間収入別金融資産未保有世帯の割合】
300万円未満…37.9%
300万~500万円未満…25.6%
500万~750万円未満…20.1%
750万~1,000万円未満…13.0%
1,000万~1,200万円未満…11.5%
1,200万円以上…9.7%
毎月、給与のある現役時代は、「稼いだ分使う」という生活でも問題ないかもしれません。しかし会社員であれば、老後の前に2つの「収入の崖」を経験します。
まず、定年前後の収入減。現在の定年年齢は60歳が多数ですが、これを境に雇用形態が変わるケースが多く、平均で3割減となります。定年直前まで役職に就いていれば、役職手当などがなくなる分、減少幅はさらに大きくなります。
そして仕事を完全に辞めて、年金生活に入るタイミングです。厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金(第1号)受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて15万1,142円。65歳以上・男性の厚生年金受給権者の平均受給額は月額17万3,033円です。仕事をしていたときと比較すると、収入が大きく減ることは、平均値からも明らかです。
そのようななか、鈴木さんのように現役時代の生活水準のまま年金生活に突入すれば、悲惨な目にあうのは想像に難くありません。高所得層は現役時代の「消費の質」が高いため、年金生活に入ったあとに生活レベルの引き下げ(ダウンサイジング)に苦労する傾向があります。「自分は平均より多くもらっている」という安心感が、結果として家計管理の甘さを生み、気づいたときには貯蓄が底をついているという事態を招くのです。
老後を支えるのは、かつての最高月収ではなく、年金収入とそれに見合った支出です。現役時代から年金生活を想定した家計のシミュレーションを行うことが重要です。