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かつてのエリートが直面した「月20万円」という現実
「スーパーのレジでお会計をするじゃないですか。後ろに列ができていても、できるだけ小銭で払うんです。10円玉をトレイに並べて、ひとつ、ふたつ、みっつと数えていって。お札で払うと、無駄遣いしてしまうので」
そんな節約術を教えてくれたのは、都内在住の鈴木健二さん(70歳・仮名)。誰もが名を知る大手企業で働き、現役時代の最高月収は100万円超。ボーナスを含めた年収は1,500万円に達した時期もあるという、いわゆる「勝ち組」のエリートです。東京・港区のマンションに住み、週末は名門コースでのゴルフ、長期休暇は海外旅行……独身だったので収入のすべてをコントロールでき、華々しい日常を送っていたといいます。
しかし、現在の鈴木さんの主な収入は、月額約20万円の厚生年金のみです。平均的な受給額よりは高い水準ですが、生活を維持するにはあまりにも不十分でした。
「現役時代、貯蓄についてはまったく無頓着でした。高い給料をもらっているんだから、老後もなんとかなるだろうと高を括っていたんです。そしたら年金なんて月20万円でしょ。その倍くらいないと、ここ(港区のマンション)には住み続けることはできません」
鈴木さんの誤算は、収入が激減したにもかかわらず、長年の生活水準を下げられなかったことにあります。現役時代、レジ横の募金箱に「小銭を持ち歩くのが面倒だから」と10円単位のお釣りは無造作に投げ込んでいたそうですが、今は絶対にそんなことはしません。
「買い物は1円でも安いものを求めて、スーパーをはしごしますよ。昔は高いワインも躊躇なく買っていましたが、今は安い酎ハイを買うのでさえ悩みます。発泡酒一本をカゴに入れるのにも数分迷うほどです。レジで必死で10円玉を探している姿を昔の自分が見たら、一体どう思うのか」
鈴木さんの退職金は、平均よりもだいぶ多い4,000万円近くあったといいますが、残りはあと僅か。趣味のゴルフ仲間との付き合いを断れず、見栄を張って高級車を買い替えてしまったことが決定打となったようです。現在は、わずかな貯蓄を切り崩しながら、月20万円の年金の範囲内で生活するために、人生で初めての節約と格闘する日々を送っています。