「人生100年時代」と言われる昨今、老後資金の不安を解消するために「年金の繰下げ受給」を検討する人がじわりじわりと増えています。受給開始を遅らせることで毎月の受取額を増やすことができる制度ですが、そこには「寿命」という予見できないリスクが潜んでいます。長生きすれば得をしますが、早くに亡くなってしまえば「払い損」になる可能性も否めません。
これで老後は安泰だ…年金を繰り下げた「資産5000万円」72歳父。「年金月28万円」に増えても、44歳息子は全否定したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

年金繰下げの「損益分岐点」と平均寿命の現実

年金の繰下げ受給では、受け取りを1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳までの5年間の繰下げで42%増、75歳までの10年間であれば84%増となります。

 

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給権者のうち繰下げ受給を選択しているのは約54.8万人で全体の1.9%。数としては少ないですが、この5年で2倍弱に増えています。

 

受取額を増やして老後の生活を安定させる――メリットの大きい制度ですが、もちろんデメリットもあります。そのひとつが、早く亡くなれば受取総額は「65歳受給開始」のケースを下回ること。一般的に、繰下げ受給の損益分岐点は、受給開始から「約12年後」と言われています。72歳で開始した場合、84歳まで生きて初めて、65歳から受給していた場合の総額を上回ることになります。

 

厚生労働省『令和6年簡易生命表』によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.13歳です。もちろんこれは0歳時点の平均余命とは異なりますが、72歳男性の平均余命を確認しても、約15年(87歳頃まで)となっています。

 

統計上は、平均寿命まで生きれば繰下げたほうが「得」になる計算ですが、これはあくまで平均の話です。健康寿命や個人の体質、生活習慣によってリスクは異なります。

 

年金は「長生きリスク」に備える保険としての側面が強い制度です。繰下げ受給は、長生きした際の安心感を高める手段としては有効ですが、今回のように想定より早く亡くなった場合、金銭的なメリットは失われます。そのような側面も理解したうえで、受給開始のタイミングを考えることが大切です。

 

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