富裕層向け投資家ビザに特化して100億円以上の申請業務に携わる中で、20年、2万人以上の成功者の歩みを詳細に知る機会を得た著者の大森健史氏は、そこから見えた「シン富裕層(※)」の共通点を、閉塞感を抱く日本人、とりわけ若者に伝えるべく、本書の発刊に至った。本記事では、大森健史氏の著書『進化するシン富裕層』(日刊現代)より一部を抜粋・再編集して、シン富裕層が指摘する日本の悪循環な「価格」の考え方について解説します。(※親が裕福だったわけではなく元々は「ごく普通の人」でありながら、インターネットやスマートフォンの普及を背景とした起業、暗号資産、動画配信、情報ビジネスなどを通じて、わずか数年で一代にして巨万の富を築いた新しいタイプの富裕層)
「安くてお買い得!」が、あなたの給料を削る?企業の善意に隠れた“良心的価格”の残酷なスパイラル

コアなファンがいれば勝てる

シン富裕層は、海外の人たちに似ています。iPhoneを好きな人は多いけど、どんどん値上げされてハイエンドの最新機種のiPhone 17 Pro Max(256GB)などは約1,200ドル(日本では約18万円)で売られています。TD Cowenというアメリカに拠点を置く投資銀行が、iPhoneの製造原価に関するレポートを投資家向けに公開しているのですが、そこの試算だと最新のiPhone 17 Pro Max(256GB)でも、製造原価はたった485ドル(約7万2,000円)程度なのです。

 

もちろん輸送費や諸経費を入れていくとコストは嵩みますが、アップル社は悪意ある価格設定で酷いという評価にはなりません。顧客が不満であれば買わないだけで、それでも欲しければ購入するものなのです。

 

自分の提示する価格で買ってくれるファン、需要と供給が自分とぴったり合う相手というのは、スモールビジネスであれば少なくても構いません。1,000人どころか100人であっても、自分に必要な対価が稼げれば大丈夫です。他人と比較されない、大企業の入ってこない、コアなマーケットを確保できればいいのです。それがスマホ一つで、世界中の人をターゲットにして実現できる時代になったのだから、挑戦しない手はありません。

 

ちなみに世界最古の企業は、日本の建設会社「金剛組」です。飛鳥時代の西暦578年、聖徳太子が朝鮮半島の百済国から招いた宮大工が創業したといいます。金剛組がなぜそんなに長く存続できたのかというと、明治時代までは大阪・四天王寺のお抱え宮大工で、つまりコアなマーケットをがっちりと確保していたからです。

 

明治に入って四天王寺の経済状況が苦しくなり、金剛組も四天王寺のお抱えのままではやっていけなくなると、少しずつ全国の寺社の修繕を手がけるようになっていきます。宮大工というニッチなマーケットですが、適正価格を払ってくれる顧客がいれば、企業はこれほど長く続けられるということです。

 

しかし、1990年代のバブルの頃に専門ではなかったマンションやオフィスビルの建設に参入し、2006年から高松建設の傘下に入ることになりました。現在は神社仏閣というコアなターゲットに絞って再生中とのことで、やはり売上の伸びだけを目指さず、コアな顧客をがっちりつかむことは古い会社であっても重要なことだと言えるでしょう。

 

 

大森 健史

株式会社アエルワールド

代表取締役