(※写真はイメージです/PIXTA)
「健康寿命」と「資産寿命」の残酷なタイムリミット
厚生労働省『第20回中高年者縦断調査』によると、2024年時点、69~78歳の人のうち、最多は「夫婦のみの世帯」で48.0%。「子どもと同居する世帯」が22.9%、「単身世帯」が14.4%と続きます。
調査対象者は第1回調査時50~59歳でしたが、20年の間に、単身者は4.6%から10ポイント以上上昇しています。健一さんのように結婚歴のない人のほか、パートナーとの別れを経験した人など、単身となった理由はさまざまですが、70代前後の6人に1人は1人暮らしという計算になります。
高齢者の収入は年金収入に固定されがちになるので、過度な貯蓄や就労に走るケースも少なくありません。その1人が健一さんでした。頼れる家族がいない分、「お金だけが裏切らない」という思考に陥りやすい傾向があるのです。
しかし、ここで冷静に見るべきは「健康寿命」の現実です。年金を70歳まで繰り下げれば、受給額は42%増えます。数字上は魅力的ですが、健康寿命(日常生活に制限のない期間)は男性72.57歳、女性が75.45歳(2022年推計値、2024年12月公表)。
70歳まで健康を犠牲にして働き、受給を我慢しても、統計的には「元気に遊べる時間」は、男性でわずか2年半ほどしか残されていないということになります。
資産は生きるうえで安心材料であるものの、使うことで初めて価値をもつものでもあります。過度な心配で人生を楽しむという本来の目的を見失ってしまっては本末転倒です。
[参考資料]
厚生労働省『第20回中高年者縦断調査』
厚生労働省『健康寿命の令和4年値について』