受験の合格発表は、家族にとって春の訪れを告げる喜びの瞬間です。しかし、その進学先が「自宅外の私立大学」であった場合、親の脳裏をよぎるのは、手放しの祝福よりも先に、重くのしかかる「お金」の心配事かもしれません。ある親のケースをみていきます。
父親失格…東京の難関私大に合格した息子を素直に祝福できない年収600万円・52歳父、即座に試算してしまった「国立大との700万円の差額」と自己嫌悪 (※写真はイメージです/PIXTA)

「教育費」と「老後資金」の板挟みになる現実

地方在住の親であれば、里田さんのような葛藤は珍しいことではないでしょう。 国立大学の4年間の学費は、入学金(約28.2万円)と授業料(年約53.58万円)を合わせて、標準額で約243万円。私立大学の4年間の学費は学部によって大きく異なりますが、文系で約400万~450万円、理系で約550万~600万円以上が目安です。

 

また全国大学生協連『第60回学生生活実態調査』で大学生の1ヵ月の生活費をみていくと、自宅生の場合、収入は月6万8,370円、支出は月6万9,500円。一方、下宿生は収入が13万2,140円、そのうち仕送りは7万2,350円、支出は13万1,710円です。

 

【大学生の収入】

▼自宅生…6万8,370円

(内訳)

・小遣い:1万0,580円

・奨学金:9,940円

・アルバイト:4万6,060円

・定職:240円 ・その他:2,010円

▼下宿生…13万2,140円

(内訳)

・仕送り:7万2,350円

・奨学金:1万9,140円

・アルバイト:3万7,540円

・定職:600円 ・その他:2,520円

下宿生の場合、仕送りと奨学金を合わせて9万円強。奨学金の利用がない場合、月10万円の仕送りをしている里田さんは平均的といったところでしょうか。もちろん自宅生だったとしても学費のほかに生活費はかかりますが、下宿生に比べて親の経済的負担は比べ物にならないほど軽いというのは明らか。里田さんが吐露した「地元の国公立に行ってほしい」という願いは、家計防衛のための切実な叫びともいえるでしょう。

 

「給料は上がる気配もないし」という里田さん。これも多くの日本人が直面する現実。子どもが夢を叶えたその裏で、親は「自身の老後の安心」を切り崩す覚悟を迫られているのです。

 

[参考資料]

全国大学生協連『第60回学生生活実態調査』