障害のある兄弟姉妹を持つ人々、いわゆる「きょうだい児」。幼少期からケアの担い手となり、大人になっても進学や結婚といった人生の節目で、家族のために自身の希望を諦めてしまうケースは少なくありません。「家族を見捨てられない」という責任感と、「自分の人生を生きたい」という想いの間で、葛藤を抱え続けています。長年自分を縛り付けていた環境と決別し、新たな一歩を踏み出した女性の決断をみていきます。
「これが最後のチャンスだった」結婚破談で目が覚めた38歳長女。「年金月14万円」70代親の制止を振り切り、実家を出た「涙の決断」 (※写真はイメージです/PIXTA)

8割が「進路・結婚」で自己犠牲…調査で見えた「きょうだい児」が抱える過酷な現実

障害のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい児」の多くが、幼少期から「ヤングケアラー」としての役割を期待され、大人になってからも進学や結婚、就職といった人生の重大な局面で、自身の希望を犠牲にしている実態があります。

 

医療法人社団ミネルバが実施した調査によると、きょうだい児として育った人の8割以上が「進学や就職の選択に家庭環境が影響した」と回答しています。具体的には「家を離れられなかった」「経済的な事情で夢を諦めた」といった声が多く上がっています。

 

また、美咲さんのように結婚・恋愛でつまずくケースも深刻です。同調査では、30代~40代のきょうだい児が抱える悩みとして、「相手家族の反応」や「相手への伝えづらさ」が上位を占めました。パートナー自身は理解があっても、その親族からの反対に遭い、破談となるケースは後を絶ちません。

 

調査では、きょうだい児が成長過程で「責任感」や「忍耐力」といった強みを獲得している側面も明らかになりましたが、それは裏を返せば、過酷な環境に耐えざるを得なかった結果とも言えます。

 

美咲さんの決断は「実家を出る=家族を捨てる」と見えるかもしれません。しかし、社会的な支援が不十分ななかで、家族だけでケアを完結させようとすれば、誰かが犠牲にならざるを得ないのが現実です。きょうだい児の自己犠牲を正当化するのではなく、経済的支援やケア体制の拡充が急がれます。

 

[参考資料]

医療法人社団ミネルバ(ミネルバクリニック)『【きょうだい児618名調査】8割以上が“家庭を優先した選択”と回答―経済的負担など支援不足が進学・結婚にも影響』