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「平均寿命」を信じてはいけない? 長生きがリスクに変わるとき
「親の長生き」が家計を圧迫するケースは、珍しいことではありません。最大の要因は、資金計画を立てる際の「寿命の読み違え」にあります。
多くの人は、日本人の平均寿命(男性約81歳、女性約87歳)を基準に計画を立てがちです。「88歳なら、平均寿命を超えているから十分だろう」と考えがちですが、ここに統計的な落とし穴があります。
厚生労働省が公表している「簡易生命表」には、0歳時点の平均余命である「平均寿命」とは別に、ある年齢の人があと何年生きられるかを示す「平均余命」が記載されています。
これによると、85歳女性の平均余命は「約8.68年」です。つまり、85歳まで生きた女性の半数以上は、93歳・94歳近くまで生きる可能性があるということ。さらに、90歳時点での平均余命も「約5.38年」あります。
入居一時金が高額な高級老人ホームの場合、償却期間(想定居住期間)内に入居者が亡くなれば未償却分が返還されることがありますが、償却期間を超えて長生きすればするほど、実質的なコストパフォーマンスは良くなります。しかし、それはあくまで「資金が尽きなければ」の話です。
田村さんのように「平均寿命プラスアルファ」程度で見積もっていると、実際の余命との乖離が生じます。特に女性は長寿化が進んでおり、95歳、100歳も珍しくありません。
親の資産が枯渇したあと、その負担は子世代にのしかかります。自分たちの老後資金を取り崩して親の介護費用を負担すれば、今度は子世代が「老後破産」する連鎖に陥りかねません。
施設選びや資金計画においては、「平均寿命」ではなく、95歳や100歳まで生きることを想定した「長生きリスク」を織り込むことが、残酷ですが不可欠な視点といえます。
[参考資料]
厚生労働省『令和5年簡易生命表』