順風満帆な人生設計が、会社からの辞令ひとつで暗転することがあります。「勝ち組」と思われた生活さえも、予期せぬ転勤によって金銭的・精神的に追い詰められてしまうケースは珍しくありません。ある男性のケースをみていきます。
手取り月43万円、タワマン購入の課長代理に「北海道転勤」の非情辞令…単身赴任なら赤字、家族帯同ならローン破綻の「詰んだ」現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「転勤=退職」が現実味…3人に1人が拒否か退職を選ぶ時代

企業が良かれと思って出す「転勤辞令」が、社員を退職に追い込む引き金になっています。

 

エン・ジャパン株式会社/人事のミカタが行った調査によると、過去3年間で転勤辞令を出した際、トラブルや条件交渉がなくスムーズに進んだケースは43%。半数以上の企業が、社員からの抵抗に直面しています。具体的には「拒否」が24%、そして「退職」に至ったケースが11%もありました。つまり、転勤を命じられた社員の約3人に1人が、会社に「NO」を突きつけている計算になります。

 

佐藤さんの事例にもあった「介護」と「共働き」の問題が背景にあるケースも多いといいます。転勤が困難な理由として最も多かったのが「家族の介護・看護」(46%)。次いで「子どもの就学」(41%)、「配偶者の仕事」(41%)でした。

 

かつては「出世の登竜門」だった転勤も、今では「生活を破壊するリスク」と捉えられがちです。一方で、転勤が支出面でも負担増につながるケースも珍しくありません。企業側も、人材流出を防ぐために「辞令一本で人を動かす」という昭和的な転勤をやめるケースも増加傾向にあります。勤務地限定制度の導入や、フルリモートワークでの遠隔地勤務など、社員の生活を守りながら戦力を維持する方法へ、大きく舵を切るべき時が来ているのかもしれません。

 

[参考資料]

エン・ジャパン株式会社『「転勤」に関する企業の実態調査。転勤辞令に対する社員の反応、「配慮要望」43%、「拒否」24%、「退職」11%。家族の介護、子どもの就学、配偶者の勤務など家庭の状況が転勤の壁に。』