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2年の単身赴任のはずが…6年目の現実
「正直、詰んだと思いました。築き上げてきた生活が、ガラガラと音を立てて崩れていくような感覚です」
大手食品メーカーに勤務する佐藤健司さん(現42歳・仮名)。新卒で入社して以来、営業一筋で成果を出し続け、課長代理に昇進。当時、月収は手取りで約43万円、賞与を含めれば年収は950万円と1,000万円の大台直前。同い年の妻も中堅商社の一般職として働いており、世帯年収は約1,600万円。いわゆるパワーカップル。「勝ち組」と言われてもおかしくない、順風満帆なサラリーマン人生でした。
コロナ禍前に都内湾岸エリアのタワーマンションを購入。価格は9,000万円。ひとり娘の中学受験も考慮して、選んだ住まいです。毎月の返済額は管理費込みで約25万円。月々の教育費も考慮すると、「余裕があるわけではありませんが、すべては計算通り。妻と協力して、定年までにローンを完済し、老後資金も貯める。完璧なプランだったんです」と佐藤さんは語ります。
しかし、そのような計画が一瞬にして崩れ去る出来事が……北海道への転勤です。期間は2年だったといいます。
「単身赴任手当が出るだろう、と上司は軽く言いました。でも、計算してみると愕然としました。二重生活になれば、家賃補助が出ても光熱費や食費、帰省旅費で月に10万円以上は支出が増えます。家計はカツカツで、そんな余力はない。かといって、家族帯同で行けば、妻は仕事を辞めなければならない。妻の収入が消えれば、住宅ローンが払えなくなり、マンションを手放すしかありません」
しかしキャリアアップになり、2年で東京本社に戻ってきたら、大幅な給与アップが見込める……そのような話もあり、転勤に承諾をしたといいます。そしてコロナ禍を挟み、北海道生活も早6年。いまだに本社に戻れる気配はありません。
「こっちの業績が好調がゆえ、なかなか戻ることができない、そんなところです。先輩の話を聞くと、3年のはずが10年以上本社に戻れなかったというケースもあるので……最近は諦めています」
しかし、昨年、義父が脳梗塞で倒れ、介護が必要になったことで、東京に戻りたいという焦りが生じているそうです。
「お義父さんの面倒は基本的にお義母さんがみているのですが、もう70ですし。そこで妻がサポートに行く機会もあるといいますが、仕事をしているうえ、母親業に、介護だなんて……無理だろうと思うんですよね」
最近、電話の声が明らかに疲れていて、心配しているといいます。
「とにかく、住宅ローンの完済は、夫婦ともに定年まで働き続けることが前提。今の生活を維持するためにも、早く東京に戻りたい……その一心なんですが、思うようにいきませんね」