周りはみんな共働き。SNSを開けば「世帯年収」の話題ばかり。そんな令和の社会で、あえて専業主婦を選ぶことには、一昔前とは違う「覚悟」が必要です。 夫一人の収入に頼る生活は、想像以上に肩身が狭く、万が一の際にはリスクも孕んでいます。本記事では石川桃子さん(仮名)の事例とともに、専業主婦における現代ならではの自己防衛策について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
物価高で周りはみんな「共働き」だが…夫の年収700万円・31歳妻が「令和にあえて」専業主婦を選んだ理由【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

専業主婦の妻にとって最も危険なリスク

夫婦間のギクシャクや不満の根源は、往々にして「お金の不安」にあります。この状況で最も危険なのは、「夫婦関係の破綻」そのものではなく、「もしものとき(離婚、夫の病気・失業)に経済的に共倒れするリスク」です。

 

経済的に依存している状態では、桃子さんは冷静な判断ができません。夫婦関係を修復したいときも、きっぱりと別々の道を歩みたいときも、「お金がないから」という理由で、不本意な選択を強いられる可能性があります。経済的自立は、決して「離婚の準備」だけではありません。それは、桃子さん自身が人生の選択権を握り、「後悔しない人生」を選ぶための重要な土台なのです。意識を変えることこそが、最初の一歩となるのではないでしょうか。

 

最初に確保すべき「私だけの緊急予備資金」

まず、桃子さんが翔平さんの顔色をうかがうことなく、安心して暮らすために必要なのが、「私だけの緊急予備資金」です。これは、もしも明日、夫婦関係をリセットする必要が生じたとしても、桃子さんが焦らず、住む場所や次の仕事を探すための時間稼ぎができる「精神的な保険」です。

 

目標は、「3ヵ月~1年分の生活費」です。現在の家賃、食費、子育て費用などを計算し、その合計額の3~12倍を、夫の口座とは完全に別の、桃子さん名義の普通預金口座に確保します。

 

資金を捻出するためには、まず家計簿を見直すことから始めましょう。夫婦のどちらがなににいくら使っているか、あいまいになっている支出(使途不明金)を明確にします。そして、保険料、通信費、不要なサブスクリプションなど、毎月必ず出ていく費用(固定費)を見直します。桃子さんが担っている家事・育児の対価として、削減した固定費の一部を「あなたの積立金」として振り分けましょう。これは、立派な「労働の対価」です。

 

「いざとなれば、私一人でもなんとかなる」そんな密かな自信が、夫への過度な迎合を止め、健全な関係を取り戻すきっかけになります。

「時間の空白」を武器に変える! 30代主婦の投資戦略

緊急予備資金を確保したら、次に考えるのは「長期的な資産形成」です。子育てのために夢を中断した期間を「時間の空白」と捉える必要はありません。むしろ、まだ時間がある「30代」という優位性を最大限に活かすチャンスです。資産形成において、「時間」は最強の味方です。特に少額を長期にわたって運用できる30代は、「複利効果」の恩恵を最大限に受けられます。

 

1.NISAの活用

少額から始められ、運用益が非課税になる優遇制度は必須です。目標は「あなた名義の資産」を増やすこと。

 

2.iDeCo(個人型確定拠出年金)の検討

専業主婦(国民年金第3号被保険者)の場合、掛金の所得控除のメリットはありませんが、運用益が非課税になる大きなメリットがあります。将来の年金を「夫頼み」にせず、自分自身で積み立てる仕組みを作りましょう。

 

ただし、日常生活に必要な金額以上を翔太さんの口座から桃子さんの口座に移した場合、年間110万円を超える部分については、贈与税がかかります。

 

投資は決してギャンブルではありません。「長期・積立・分散」を徹底し、毎月決まった額を、世界経済全体に分散投資するインデックスファンドなどに積み立てていく。「投資」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、これは「自分の老後」を夫任せにしないための手堅い手法です。月々1万円でも、10年後、20年後には大きな差となります。