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増加する「黒字リストラ」…専業主婦世帯の家計リスク
昨今、「大手だから安泰」という神話は崩れつつあります。
東京商工リサーチの調査によれば、2024年に早期・希望退職者を募集した上場企業は57社にのぼり、募集人数は3年ぶりに1万人を超えました。また募集を実施した企業の約6割が、直近の決算で「黒字」だったと報告されています。業績が悪化する前、体力があるうちに人員構成を見直す「黒字リストラ」が常態化しているのです。
明さんのように50代で会社を離れた場合、再就職のハードルも低くありません。厚生労働省『令和5年 雇用動向調査』によると、転職によって賃金が「減少」した人の割合は32.4%にのぼります。年齢が上がるほど、前職と同等以上の条件を維持するのは難しくなる傾向があります。
また、陽子さんのように、配偶者が長らく専業主婦(主夫)であった世帯は、大黒柱の収入が途絶えた際の家計リスクが極めて高くなります。内閣府『男女共同参画白書 令和5年版』によると、共働き世帯が1,262万世帯(2022年)と主流になる一方で、夫が雇用者・妻が非就業者の世帯(いわゆる専業主婦世帯)も534万世帯存在します。
「夫の会社が大丈夫」という前提に依存した家計は、予期せぬリストラや病気などで、一瞬にして基盤が揺らぎます。老後の備えというと、つい貯蓄や資産運用に目が行きがちですが、これからの時代は「夫婦どちらも、いざという時に働けるスキルを持つこと」が、最も堅実なリスクヘッジなのかもしれません。
「夫の再就職も決まりましたが、収入は半分くらいになりました。それ以上に、リストラのショックを引きずっていて、そっちのほうが不安です。どちらにせよ、私も頑張って働かないとなりません」
[参考資料]
厚生労働省『令和5年 雇用動向調査』
内閣府『男女共同参画白書 令和5年版』