年齢を重ねるにつれ、子育てや仕事の責任が増し、忙しさに追われる日々のなかで「自分のことは後回し」になっている人も多いでしょう。しかし、ある日突然その“後回し”の代償が、人生を揺るがすかたちで現れることもあるようです。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、著者の「転機」となった出来事とそこから得た教訓をみていきます。
4時間睡眠、往復4時間通勤。仕事と子育てに明け暮れ…総合職としてキャリアを重ねた50代女性、息子が家を出たあとに気がついた「28年で失った大切なもの」 (※写真はイメージです/PIXTA)

いまが「仕切り直し」のタイミング…自分の声を聞き、退職を決意

3か月の休職期間を経て無事に復職した私は、以前と同じようにハードワークの日々に戻っていったのですが、何かが違いました。

 

そこには体調の変化に、より敏感になった自分がいたのです。これまでの習慣からどうしても仕事中心の生活に戻ってしまうなか、「このままでいいのだろうか」という問いが、より大きな声で心のなかで響くようになっていました。

 

そして私はほどなく退職を決意することになります。

 

これから先、仕事をしたくないわけではありませんし、仕事をしなくていいわけでもありません。ただ、いまの仕事環境と自分のあり方はこれまでと変わっておらず、せっかく病気をして気づいた大切なことを生かせないまま過ごしていることに、このままではまた同じことを繰り返してしまうのではないか、本当にこのままでいいのか……と切羽詰まって苦しい気持ちになりました。

 

その苦しい気持ちに気づいた瞬間、「いまがちょうど人生を見直す仕切り直しのタイミング」だと確信した私は、自分の心の声に素直に従い、次の仕事が決まらないまま思い切って仕事を辞めることを決めたのです。そして「自分と向き合う時間」をもつことを選択しました。

 

その期間を決めていたわけではありませんでしたが、「見直しがおわった」と感じたときには、すでに5か月が経っていました。俯瞰的に自分のこれまでを振り返り、自分とたくさん対話をしたと思います。

 

この期間を終える頃、私はこれから先の人生に対して不安なく、むしろワクワクする気持ちでいっぱいになっていました。「自分と向き合う時間」を過ごした結果として、自分の心の奥底から湧いてくる「やりたいこと」があることに気づき、その準備を整えられたのです。

 

病気をしたことも、離職期間をつくったことも、私にはプラスでしかなかったと、いまはそう思えます。私はいくつもの新たな気づきを得て、次の新しい道に進むことができました。勇気を出して立ち止まることは必要だったと確信しています。

 

 

獅子にひれ

ライター/AFP

 

※本記事は『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。