5.移住の妄想パターン…なぜかまだ多い「田舎」への期待

日々人にまみれていると、たまに地方へ足を延ばすと、その空気のおいしさに感激します。深呼吸なんて久しぶり、電波が届かない幸せ、人間より動物の気配、なんともいえない魅力的な環境。いつしかこんなところで、数字や成果より土に根をおろし、風とともに生きよう。種とともに冬を越え、鳥とともに春を歌う暮らしにと思う気持ち、わかります。

しかし、そんな田舎に出会えるかどうかは別の話。中山間地域では思った以上に人口減少が過酷で、最後のひとりを誰が担うのかといった椅子取りゲーム状態です。

田舎暮らしに憧れるのはたいてい男性のほうで、現実的な思考の女性は老後を考えると都市部がいい、という判断。賢明です。これが理由で熟年離婚をする例が少なくないとか。まして田舎では希望する仕事がそれほどありません。結局都市部に戻ってくる話もよく聞くのですよね。

移住も、よく調べてから。働ける地方都市を探して移住、または二拠点生活が理想かもしれません。実は住むだけで健康になる街もあれば、ここで要介護になるとおしまいという街もあるのです。定年後世代とは福祉と切っては切れない年代。現実的な田舎の味わい、難しさを知っておくのは必要です。

つまり、いまの中高年世代が知っている定年後生活のイメージとは、ちょっと違うのが現実です。サザエさんやちびまる子ちゃんに慣れてきた世代にとって、定年ワードは「余暇」や「悠々自適」という言葉がまだ息づいているのでしょうね。

◆ここまでのまとめ◆

●定年のブランクは、できるだけ短くするに越したことがない

●定年後生活をゆっくりのんびりしている暇はない

※引用

厚生労働省監修広報誌『厚生労働』2021年11月号https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202111_00001.html

丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表

※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。