40代・50代にとっての定年後は「余暇」「悠々自適」といったイメージが根強いようです。しかし、「これまで頑張ってきたのだから、定年後はのんびりしよう」などと考えていると、思わぬ落とし穴にはまることも。本記事では、丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、定年後に「ゆっくりしたい」と考える人が陥りがちな5つのパターンを通して、老後の現実をみていきます。
定年後、退職金を手に「まずは豪華旅行だ」と胸を弾ませる50代…「自分にご褒美」の恐ろしい代償。ブレーキが壊れた老後の転落
1.ご褒美散財パターン…「自分にご褒美」というキラキラワードの麻薬
これだけ働いていたと思ってしまうほど、かなりがんばってきたんですね。きっといろいろなことを投げうち、犠牲にして、あきらめたり、感情を飲み込んだりしながらやってきたということは、いつも全力でやってきたんでしょう。
「ほかにできる人がいないから頼む」と役割を与えられたり、トラブルを起こした部下や後輩、となりの部署の後始末をしたり、上司が大失敗してヘラヘラ笑いながら定年していく姿を反面教師にして、自分が退職したあとのことを考えてやってきた。そんな姿が伝わってきます。
だから褒められるべき。いたわられるべき。そう考えるのもわかります。ゆっくりしたいですよね。だから、これだけ働いてきたんだから自分にご褒美として、おいしい紅茶を飲む、小旅行する、エステに行く、高価だけど長く使える家具や服を買う、若いころ憧れだった外車を買う。ありです。だって、ご褒美だから。
ところが、退職金は使うとあっという間に減っていきます。失業手当も受給できますが、それ以上にブレーキの壊れた自転車が坂道を下るように、ご褒美という散財でアドレナリンが出てしまい、快楽そのもの。さらには将来の生活費にと、投資の話や自己投資として美容・健康に使ってしまうなど、お買い物に溺れてしまう人、危険です。
がんばってきた人ほどブレーキが壊れています。どうしたんでしょうね、自分の自制心までさびついてしまったのでしょうか。
2.思考停止パターン…働く中高年は「のんびり初心者」
しばらくのんびりして、それから考える人も危険です。そもそも「のんびりする」経験がありましたか。日本の成長を牽引した世代、のんびりって初体験。どうやってのんびりすればいいかわからず、のんびりすることを求めて細々と動こうとします。
自宅をのんびりする場所にと、せっかくなら老後のためにと段差解消しようとか、補助金が出るなら二重サッシにとか、リフォーム会社とのやりとりをした人もいました。
体力をつけたいな。できればおなかに縦筋入れたいな。もうこんな年齢だからちゃんとしたジムへ行こう。どこがいいかな。若い人たちのなかに混じるのは気が引けるな。トレーナーは厳しめがいいのかな。けっこう高額だな。あれこれ調べて比較して、ひととおり体験に行ってみないと決められないジム・ジプシーになる人もいました。
「趣味がないと」と家族から指摘され、なかば強制的に趣味を見つけようとするけれど、何が好きだったか、興味や好奇心こそ休眠中で、趣味を見つけるために彷徨い、焦る。するとまわりから「のんびりしたら?」と言われて、「あ、そうか」と我に返る。ひとまず目の前の仕事を片付けてからだな。いつかのんびりできたらいいなあ。
のんびりできてない。とにかくゆっくりさせて、というのんびり初心者の「暇」への憧れでしょうか。けれど結局は気が休まらないので仕事しようとすると、ブランクを埋める気力が湧かないことに愕然とします。