定年を間近に控える50代は、バブル崩壊やデジタル化といった激動の時代を、持ち前の協調性と忍耐力で乗り越えてきた世代です。しかし現在、このように身を粉にして働いてきたにもかかわらず、「働かないおじさん(おばさん)」とレッテルを貼られてしまう人が少なくありません。かつて「いい社員」と呼ばれた彼らが、いつしか「どうでもいい社員」とみなされるようになった背景には、なにが潜んでいるのでしょうか。丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、多くの中高年社員を静かに追い詰める時代の変化をみていきます。
「LINEでディスられ」「意見したら“古い”と一蹴」…会社に尽くした“誠実な50代”を待つ、「年収2千万円のお荷物」というリアル
実は“働きたい”?…「働かないおじさん」の実際
「働かないおじさん」っていわれてもね。私だって働きたいんだけどね――
働かない社員は中高年世代に限らず、若手にも一定数いますよね。世代に限ったことではありません。とはいえ「働かないおじさん」とピンポイントで指摘するのですから、たしかに中高年世代の男性・女性を思い浮かべてしまうよね、ということになります。
働かない社員とは、その昔「窓際族」といわれ揶揄されたイメージがありました。仕事をしないで、たばこ吸ったり、新聞読んだり、遅刻早退したり。同世代の出世した社員が残業しているのを横目で見ながら「お先に〜」なんて、無責任さを全面に出しながら定時で帰る。
中途半端な仕事をしてはほかの社員が尻拭いしたり、ズル休みはもちろん、直行直帰します!とがんばっているようで、映画やカラオケ、打ちっぱなしに行っていたり。当然そういう嘘がばれ、厄介な邪魔者扱いされてきました。どこにでもいる、のらりくらり生きる社員のことをイメージします。
こんな経験がある中高年世代だから、働かない年配社員といわれてうれしい人はいないでしょう。このごろは「Windows2000」といわれたりするようです。窓際でのんびり仕事したふりして、年収2千万円を手にする人だとか。うらやましいって。とはいえ、どう見ても「厄介者」という扱いです。
ところが、実際どうでしょう。
・そもそもカタカナ言葉がわからない
・パソコンやタブレットの使い方がどうしても頭に入らない
・使い方を聞いてもやっぱりわからない
・会議で意見をしたら「古くさい」と一蹴される
・経験を語ると「時代が変わったんだよ」と言われる
・なんとかアイデアを出したら「そんなにがんばらなくても」と慰められる
・なんでも「若い人のために」と言われてないがしろにされる
・長のポジションを譲りたいけれど収入が下がるのは困る
・年下の上司のリスペクトのない態度に無性にムカつく
・句読点のLINEは圧が強いと、外されたライングループでディスられる
・励ましたらハラスメント、褒めたらルッキズム
・あのころはよかったなと戦友のような同世代同士で慰め合う
……という現実に、息もしないでひたすら黙る。早く定年こないかなと心待ちにしつつ。