40代・50代にとっての定年後は「余暇」「悠々自適」といったイメージが根強いようです。しかし、「これまで頑張ってきたのだから、定年後はのんびりしよう」などと考えていると、思わぬ落とし穴にはまることも。本記事では、丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、定年後に「ゆっくりしたい」と考える人が陥りがちな5つのパターンを通して、老後の現実をみていきます。
定年後、退職金を手に「まずは豪華旅行だ」と胸を弾ませる50代…「自分にご褒美」の恐ろしい代償。ブレーキが壊れた老後の転落
3.体力低下・フレイルパターン…中高年世代の大半が「介護予備軍」
定年前後の何が怖いかというと、ダントツで「フレイル」。ダメージに強かったこれまでとは違い、想定外の弱さに戸惑います。
「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指します。年齢を重ねていくと、心身や社会性などの面でダメージを受けたときに回復できる力が低下し、これによって健康に過ごせていた状態から、生活を送るために支援を受けなければならない要介護状態に変化していきます。※
高齢者を見ると体力は格段に向上しています。年々健康寿命が伸びているのもわかりますよね。とにかく元気。人によっては現役世代よりもよく食べ、よく寝て、よく動く。筋肉はまったく正直で、トレーニングの結果そのもの。フィットネスクラブに出勤しているような、毎朝毎晩入りびたり、お風呂まで入って帰るという「住んでいますか」と言われるヌシもいたりします。
しかし現役世代・中高年世代の体力低下は著しく、姿勢の悪さ、筋肉の少なさなどからくる腰痛、肩こり、目の疾患と転倒の不安がつきまとう、まさに「フレイル」状態です。
これだと定年後にしたいことをするパワーがない。現金はあるのに元気がない(しょーもないギャグです。すみません)。休日にごろごろしているだけでは、認知症、転倒から入院、要介護状態へまっしぐらです。
とにかく、動く。だとしたら、通勤していたころのほうがよく歩いていたし階段も上がっていた。健康だったと嘆く前期高齢者にたくさん出会いました。働くことが動くこと。とても大切です。動くことが仕事だと思ってください。
4.趣味と夢に現実逃避パターン…願望を叶えたあとの虚無感
定年したら再雇用とかパート勤務とか、いろいろなお誘いがあるはずだけど、それら全部お断りして、したかったことをしたいのだと、かつて少年少女時代からの憧れ、ずっとあたためていた趣味や夢にチャレンジする人もいます。
個人的には私もこのパターンに近いです。ただし少年少女時代だからこその価値、一人前になるまで時間がかかる趣味や夢だと残念ながらタイムリミットになるものもあります。
たとえば楽器。夢だったバイオリンを弾きたい、オーケストラで弾きたいと、超高額な楽器を買ってしまう中高年が近年増えているようです。ところが、難しい。肩や腕が思うように動かず、まさに修行。とくにバイオリンは体を痛める楽器で有名で、「拷問楽器だ」と知人の楽器屋さんが苦笑していました。
軽自動車で友だちを尋ねる日本一周の旅に出る、という夢がある人もいます。意外と多くいるのに驚くのですが、それほど日にちもかからず、なんだかあっという間におわってしまい、日本は狭かった、自分の人間関係も狭かったんだと、花火のあとの虚しさを味わい、さて働こうとする気持ちの切り替えが難しい、という人もいます。
したい趣味があるなら、その瞬間にするべき。瞬発力が必要です。夢を叶えるのも思ったときにやるから輝けるもの。
いつか叶えたいと大事に保管しすぎて、やがていざ定年したちょっとセピア色をした中古の自分がやるには、その夢はキラキラしすぎて手に負えないのかもしれません。夢を叶えるタイミングを失ったら、そのまま夢のままでいいんじゃないでしょうか。