65歳以上の平均貯蓄は2414万円。生活に不安がないにもかかわらず、なぜ彼らは“あえて”働くのでしょうか。その動機は、もはや「年金の補填」や「居場所のなさ」といった、従来のイメージとは異なるようです。丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、シニア世代が実践している新しい働き方とその目的についてみていきましょう。
昔はこんなに暑くなかったのに。子育てもおおらかだったのに…平均貯金額2414万円・生活不安なしの「安泰シニア」が、「若い世代」に向ける“憐みの目”
65歳以上の貯金額「平均約2400万円」だが…老後も働く人が多いワケ
実際いいお年の方々は、どのくらい貯金しているんでしょうか。気になりますよね。
総務省の2022年家計調査報告(貯蓄の状況)の結果では、世帯主が65歳以上の世帯における貯蓄金額の平均値は2414万円。中央値は1677万円でした。貯蓄額が2500万円を超える世帯の割合は、全体の3.2%とおよそ3分の1を占め、300万円未満の世帯が全体の14.4%を占めているとあります。
サラリーマン生活を終え、退職金などまとまった資産を得て、そのまま貯金しているのかもしれませんし、親からの相続があったからかもしれません。こうした背景もあるのか、実はいま「生活費はもうほぼ準備できていて、心配ないよという人が意外に多くいる」ことがわかっています(内閣府の調査によると、経済的な暮らし向きについて心配がないと感じている65歳以上の人は68.5%いる)。
傍目から見ると、生活費に困ってないんじゃない?と思ってしまいそうです。それなのに働いているのはなぜでしょうか。
それは、まさにお金以外に得られるものがあるからです。人口減少による働き手不足だから働こうよ、という政府の声かけに乗っかったわけではなく、自宅に居場所がなくて、とりあえず外に出る、という悲哀でもなく、自分自身のために自ら担い手になろうとする人たち。新しい働き方の先駆者です。
ここでは、かっこいいおとなが選ぶ新しい働き方について、3つご紹介していきますね。
1.現役時代のノウハウが生かせる「地域活動」
いまアツいのが地域活動の担い手になる選択です。地域活動とは、自宅を中心にした生活圏域の住民同士の交流や助け合い活動のことです。
一般に、子どもと高齢者の生活範囲は自宅を拠点に半径数キロ。サンダル履いてコンビニやカフェへ歩く、公共交通機関で行ける無理ない範囲で図書館やショッピングするなど、身近な範囲で生活が完結するようになります。
顔見知りが増えたり、挨拶する間柄になったりすると、やがてその範囲にある気掛かりに触れることが増えます。いままで目に留まらなかった些細なこと、足もとのことが耳に入り、なんとか問題解決できたらいいなとか、日々の掃除や片付け、メンテナンスができればいいのにとか、時間があるからちょっとやっておこうかと、自ら動こうとする「地域活動」の担い手という方法です。
こういう人のことを「地域ボランティア」と呼び、自治会町内会、地区社会福祉協議会、自主防災会といった地域団体の役員をしたり、民生児童委員や調停委員、保護司といった公共の福祉に従事したり、フラダンスサークルの事務局や子ども会のお世話などがあります。
やってみると意外におもしろさがあり、必要な役目だと気づくことが多いもの。しかも、そういった地域団体も運営の透明性や新しい方法へのアップデートが求められていて、現役時代に皆さんがやってきた仕事のノウハウ、業務改善、生産性向上の方法が大変生かされる場面でもあります。
昨今、行政は地域で自主的に運営をしてもらいたいと考えていて、一定程度の補助金を渡すからうまく使ってねといっています。
そのためには整理された組織にしてガバナンスが必要ですが、たとえば従来からある80代の地域の名士が長として君臨している高齢者だけの団体だとそれが担えず、結局地域の衰退になってしまうことも少なくありません。組織で敏腕をふるってきた経験が地域で発揮でき、多くの人に喜ばれます。