「介護は嫁の仕事」「相続は長男に」「定年後は悠々自適」……。昭和の時代、親の背中から学んだ「家族の当たり前」。 しかし、その価値観のせいで、人生100年時代を迎える定年世代が自身とのギャップに苦しむことも。本記事では、丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、定年間近の世代がお手本にしてはいけない「老後の生き方」と、なぜ今こそ価値観のアップデートが必要なのか——その背景にある社会の変化について考察します。
「軍人恩給」に豊かな年金のおかげで、100歳を超えても“大黒柱”だった母…これから老後を迎える世代を縛る、豊かすぎた「昭和の呪縛」
「両親の生き方」をお手本にしてはいけない
子どものころから一番長く接してきた人間で、いい意味でもそうでなくても人生の価値観に多大な影響を与えた人たち。それは父と母です。結論からいうと、いまの定年世代の皆さんは、親の生き方や価値観のすべてそのまんまお手本にしてはいけません。
家族とは何でしょう。子を産み、育て、養います。誰かが具合が悪いときや機嫌が悪いときには、看病したり寄り添ったりサポートしてきたベストメンバー。それが家族です。
昭和の家族はテレビのチャンネル権や扇風機・エアコンの操作権は父か長男というリーダーにあり、食事の準備と後片付けや家事全般は、母かお姉ちゃんや妹たちという女子マネージャーの仕事。家族にはそれぞれ暗黙のルールがあり、父の靴下は母が履かせる、男の料理は豪快で後片付けは女の仕事。
言わば女と酒は男の甲斐性、多少のやんちゃは大目に見る懐の深さと愛情が女の強さみたいな、いまはすっかり時代劇化した男女観がありました。
そんな生活を見て暮らしてきた私たち世代。年を取る親の姿から暗黙のメッセージを受け取り続け、いまだに思考が昭和の人が少なくありません。
「定年後は年金生活」「年に一度は海外」の幻想
「定年後は悠々自適、のんびり年金生活」「年に一度は海外旅行または毎月国内旅行」「法事は家族親戚一同が集まる」「介護は女性・妻・嫁の仕事」「料理は当然女性の役目」「町内会と料理とボランティアはお母さん、役員はお父さんの仕事」「相続は長男に全部渡す。もちろん墓も長男に」「親の介護の主導権は長男が仕切る」「たまには子や孫にお小遣い」など。見たり、聞いたりしたことはありませんか。
まさか、こういうのはもうありえない。とはいえ、無意識にこれを信じている人も、まだまだ多くいるようです。このままだといざというとき家族と向き合わないといけない局面で、浦島太郎っぷりを発揮して思わぬトラブルになったりします。