定年を間近に控える50代は、バブル崩壊やデジタル化といった激動の時代を、持ち前の協調性と忍耐力で乗り越えてきた世代です。しかし現在、このように身を粉にして働いてきたにもかかわらず、「働かないおじさん(おばさん)」とレッテルを貼られてしまう人が少なくありません。かつて「いい社員」と呼ばれた彼らが、いつしか「どうでもいい社員」とみなされるようになった背景には、なにが潜んでいるのでしょうか。丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、多くの中高年社員を静かに追い詰める時代の変化をみていきます。
「LINEでディスられ」「意見したら“古い”と一蹴」…会社に尽くした“誠実な50代”を待つ、「年収2千万円のお荷物」というリアル
50代以上はコスパが悪い…中高年社員を足蹴にする会社の本音
ところが、密かに「いい社員」の頭には「どうでも」がついて「どうでもいい社員」とみなされます。会社の本音は「コスパのよくない50代以上は定年までいてもらわなくてもいい。もしご家族の介護などあるならば、どうぞ家庭を大事にしてほしい。引き留めませんのでご退職を」です。
人材不足ではないの? もちろん、そうです。しかし、それよりも世代交代をしたい。あとがない高給取りのひとりで、未来ある若者2人は雇用できます。たとえ3年未満で辞められたとしても、そちらのほうが大歓迎。できれば再雇用もあきらめてほしい。一部の人を除いては。
だから中高年世代になった社員に対し、会社が研修をしたり、丁寧に個別指導をしたりして、能力開発をするよりも、新卒者採用や若い世代の中途採用に力を注ぎたい。そもそも、その仕事をアウトソースすることで、少人数でもまわる職場をつくりたい。これこそ余力がないなか会社を持続可能にする、まっとうな経営戦略の姿でしょう。
会社の期待を感じないなら、自分の人生を見つめるチャンス
あなたの会社は中高年世代の社員に何を期待していますか。昭和から平成の数十年、会社を支えてきた人材に対するリスペクトはありますか。
少なくとも、社員の誰かが「働かないおじさんがお荷物だ」などといおうものなら、あなたのその忠誠心は、とても無駄遣いしてしまっています。もったいない。
もうご存じのとおり、定年後も働く時代です。どんな働き方をするか人それぞれですが、少なくとも会社のために犠牲になって身を粉にした時間の切り売り仕事ではなく、自分の未来に向け直してみてはどうでしょう。
もし、その会社が「どうでも」って考える会社なら、あなたの未来のことをそれほど興味もないし、ましてや責任もありません。いままでの功績や努力はすでに給料で返しているから、今後も終身雇用として大事にしてあげましょう! なんて温情は薄れているかもしれません。
そういう会社に、これからも人生を犠牲にして居続けることで明るい未来があるだろうかと考えてみてください。
あぁ、すっかり働かないおじさんになっちゃったな、おばさんになってしまったかしら。そう自覚するあなたは、見方を変えると、ひたすら会社のため、家族のために働いてきた、正しい生き方をしてきた誠実な人です。その正しさを今度は、自分の人生のために使ってみてはどうでしょうか。
◆ここまでのまとめ◆
●「働かないおじさん」は時代に置いていかれた中高年世代
●定年後も働くいま、自分のために働き方を考える必要がある
丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表
※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。