「終活」という言葉が浸透し、「家族に迷惑をかけたくない」と万全の準備を進める人は増えています。しかし、財産や持ち物の整理はできても、「最期をどこで、どう迎えるか」という問いは簡単ではありません。
死ぬ準備はできてます、でも…〈年金月15万円〉82歳、終活完了で「老人ホーム入居」も後悔。人生唯一の心残りに号泣 (※写真はイメージです/PIXTA)

最期の希望をどう叶えるのか?

田中さんのように「家族に迷惑をかけたくない」という思いは、多くの高齢者に共通するものです。

 

日本財団『人生の最期の迎え方に関する全国調査』によると、「人生の最期を迎えたい場所は?」の問いで最も多かったのは自宅(55.8%)。理由としては、フリー記述で「安心できる・馴染みがある」、「最期まで自分らしくいられる」、「自分で建てた家だから」、「家族に囲まれていたいから」、「自然だから」、「余分なお金がかからないから」といった声があがりました。

 

一方で、「死期が迫り人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に、あなたにとって重要だと思うことは何ですか。」の問いに対して、最も多かったのが「体や心の苦痛なく過ごせること」。「「家族等の負担にならないこと」」が続きました。

 

——最期は大切な家族の近くにいたい。でも、家族には迷惑をかけたくない

 

複雑な心境が伺えます。終活というと、持ち物の処分や葬儀の準備といった「モノ」の整理に目が行きがちです。しかし、「自分自身がどのような最期を迎えたいか」という本人の希望と、「家族の負担」という現実的な問題の狭間で、何を大切にすべきか、簡単に答えを出せるわけではなさそうです。

 

介護する側とされる側、両方の視点を想像することは難しいかもしれません。だからこそ、心身ともに元気なうちに、万が一の時に「どこで」「誰に」「どのようなケアを受けたいのか」を家族と具体的に話し合っておくこと。それが、本人にとっても家族にとっても、「後悔」を減らすための一歩になりそうです。

 

[参考資料]

日本財団『人生の最期の迎え方に関する全国調査』