「どう生きていけば…」という悲痛な声は、決して他人事ではありません。高齢の単身女性の多くが、年金だけでは生活が立ち行かない現実に直面しています。本記事では、平均的な年金額と生活費の実態をデータから確認し、利用できる公的支援や、私たち現役世代が今から備えるべきことについて解説します。
もう限界です…〈年金月12万円〉78歳の単身女性、築55年・アパートの一室で号泣「どう生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけでは暮らせない…単身高齢女性の貧困と、私たちができること

小百合さんのように、年金収入だけでは生活が立ち行かない高齢者は少なくありません。厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金(老齢基礎年金)のみの受給者の平均年金月額は5万7,700円。小百合さんのように厚生年金(第1号)の受給権がある人の場合、老齢基礎年金を含めた平均年金月額は14万7,360円。65歳以上の女性に限ると、平均11万1,479円。小百合さんの年金受取額は極めて平均的といえるでしょう。

 

一方で、高齢者の生活実態はどうでしょうか。総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、65歳以上の単身無職世帯(女性)の消費支出は、月平均で15万5,923円。小百合さんの場合、年金の手取り額は月11万円というので、平均的な暮らしを実現するには、貯蓄から月4.5万円を取り崩すか、または月4.5万円の節約をするかの選択になります。将来を見据えて資産形成を行えていたなら、何てことないかもしれません。しかし70歳を過ぎるまで借金の返済に追われていた小百合さんにとっては、取り崩すものもなく、毎日生き抜くだけで精いっぱいであることがわかります。

 

一方で、高齢者のなかには「誰にも迷惑をかけたくない」と支援を求めることをためらうケースも多いのが現実です。しかし、生活に困窮した場合は、ためらわずに公的な支援を頼ることが重要。生活保護制度のほか、自治体によっては独自の家賃補助や高齢者向けの給付金制度を設けている場合があります。まずは地域の役所や地域包括支援センターに相談することが第一歩となります。

 

私たち現役世代にとっても、これは他人事ではありません。自身の老後に備え、貯蓄や資産形成(NISAやiDeCoなど)を早期に始めることはもちろん、親世代の経済状況や生活に関心を持つことも大切です。そして何より、小百合さんのような「声なき声」が社会に存在することを認識し、高齢者が孤立せず、必要な支援につながれるような地域社会のあり方を考えていく必要があります。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』