(※写真はイメージです/PIXTA)
夫の借金返済に追われて70代…何も残っていなかった
「まさか、こんな老後になるなんて。若いころは夢にも思っていませんでした」
吉田小百合さん(78歳・仮名)です。築55年になる木造アパートで、1人静かに暮らしています。23歳のときに結婚し、2人の子どもを育て上げましたが、夫は多額の借金を残して、30年前に他界。文字通り、朝から夜まで働き、借金を返済していく……そんな毎日を送っていました。
「子どもはすでに独立していたのが、不幸中の幸いでした」
70代に入り、ようやく借金は完済。しかし、小百合さんの手元には何も残りませんでした。老後のための貯蓄はもちろんありません。
「完済したときは、本当にホッとしました。でも、気づいたら自分もすっかり年を取っていて……自分の老後のことなんて、考える余裕もなかったんです」
借金完済後も、生活のために清掃のパートを続けていましたが、腰を痛めて今年に入り退職。現在は、月12万円の年金だけが頼りです。
「年金は手取りで月11万円ほどですね。家賃と水道光熱費、携帯代を払ったら、残り5万円くらい。そこから食費や雑費を捻出したら、ほぼ何も残らない」
折からの物価高騰は小百合さんの生活を直撃。スーパーでは見切り品ばかりを選び、最近は食事の回数を減らして、1日1回ということも。米が高いため、最近は買うこともないといいます。
「1回だけ、備蓄米を買うことができたんだけど、最近はみないね。その代わり、新米が5キロで5,000円って……ちょっと手が届かないよ」
小百合さんが住む地域では、そろそろ雪の便りも。朝には、5度を下回るようになりましたが、まだ暖房を使っていないといいます。
「灯油も高いでしょ。もうろくに働けないから、できるだけお金をかけないように、かけないように。ただ時間が過ぎるのを待っているの」
一度、役所に生活相談に行ったことも。しかし「お子さんを頼ってみては」とアドバイスを受けただけに終わったとか。子どもたちは遠方に住んでいるうえ、自分たちの生活で精いっぱいであることがわかっているのに、迷惑などかけらなれないといいます。
いつもは気丈にふるまう小百合さんですが、ふとしたときに緊張の糸が切れ、涙が止まらなくなることがあるといいます。
「通帳をみるたびに、本当に余裕がないんだなって現実を知る。何かあった際には、対応できない――そうやって将来を悲観してしまうんです。この先、どうやって生きていけばいいんだろう――そんなことばかり考えています」