老後、夫婦で「平均月25万円」…生活費を資産収入でカバーするためには、どうしたらいいのでしょうか。長期投資と複利の効果を活かした、資産形成の「正攻法」についてみていきます。
年金は期待していません!68歳専業主婦、生活費〈月25万円〉を年金以外で賄う「すごい資産形成術」 (※写真はイメージです/PIXTA)

20代専業主婦が始めた資産形成の結果

「年金ですか? あまり期待はしていません。お小遣い程度に振り込まれればいいかな、くらいに思っています」

 

佐藤優子さん(68歳・仮名)。20代で結婚して以来専業主婦として家庭を支え、現在は定年退職した夫との二人暮らし。多くの同世代が年金受給額に一喜一憂するなか、佐藤さん夫婦の主な生活費は、年金以外の収入で賄われているといいます。

 

「生活費は、夫婦二人でだいたい月25万円ほどです。その全額を、私が保有している株式の配当金でカバーしています」

 

専業主婦だった佐藤さんが、どうやってそれほどの資産を築いたのでしょうか。きっかけは、専業主婦になったばかりのころに感じた、漠然とした将来への不安でした。

 

「夫の給料だけで、子どもたちを大学まで行かせられるだろうか。自分たちの老後は大丈夫だろうか、と。そのとき、ただ節約するだけでなく、お金にも働いてもらおうと考えたのです」

 

佐藤さんが取った行動は、まず家計の徹底的な見直しでした。光熱費や食費を切り詰め、毎月数万円の「余裕資金」を生み出しました。そして、そのお金を株式投資に回すことに決めたのです。もちろん、最初から順調だったわけではありません。投資の知識はほとんどなく、そのほとんどを本から学んだといいます。

 

「当時は便利なインターネットもありませんし。大切にしたのは、『長期』で持つことと、『分散』させること。そして、何より『配当』をしっかり出してくれる企業を選ぶことでした」

 

30代、40代は、子育てと家計のやりくりに追われる日々。そのなかでも、佐藤さんは月数万円の投資をコツコツと続けました。購入するのは、業績が安定していて配当利回りの良い、いわゆる優良株が中心です。

 

「バブル崩壊やITバブルの崩壊、リーマンショックも経験しました。株価が大きく下がった時は不安にもなりましたが、長期保有が前提です。配当を出してくれる限りは、慌てて売ることはしませんでした」

 

佐藤さんは、時代の大きな流れにも目を向けていたといいます。

 

「無理な投資は一切しませんでした。あくまで家計の余裕資金の範囲内です。ただ、社会がどう変わっていくかは意識していました。インターネットを使って便利だなと思ったら、それに関連した会社に注目する。外国人観光客が増えてきたなと思ったら、インバウンド関連の会社に注目する。普段、生活しているなかで実感できることを大切にしてきました。あとは株価の上下に一喜一憂するのではなく、この会社が10年後、20年後も社会に必要とされ、利益(そして配当)を生み出し続けてくれるかを考えるんです」

 

運も味方してくれたと佐藤さん。インターネットバブル崩壊後、注目した会社の株式は10年ほどで数十倍にもなったとか。一気に資産額を増やし、それを元手にさらに配当のいい株式に投資する――。50代になり、子育てが一段落すると、佐藤さんはパートで働き始めました。その収入の多くも、株式の買い増しに充てられました。若いころに始めた月数万円の投資が、30年以上の時を経て、複利の効果も相まって大きな資産へと成長していったのです。

 

夫が65歳で定年退職。退職金は受け取りましたが、それにはほとんど手を付けず、老後の「もしも」の備えとして確保してあります。日々の生活は、佐藤さんが育て上げた株式資産からの配当金で、十分に賄えています。

 

「時間を味方につける。これに尽きると思います。若いころは月数万円でも、30年、40年と続けると大きな金額になるのは本当です」