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親の資産が頼り……「8050問題」に潜むリスク
バブル崩壊後の不景気で正規雇用の道が狭められた「就職氷河期世代」は、今、40代から50代前半に差しかかっています。不安定な収入から、親元で暮らす人も少なくありません。
こうした状況が深刻化したものが、80代の親が50代の子どもの生活を支える「8050問題」です。親の年金や貯蓄を頼りに生活が成り立っている場合、親の病気や介護が始まった途端、家計は一気に立ち行かなくなります。
先日、自宅に死亡した母親を床下に隠し、死亡したことを市役所に届け出ず、約53万円の年金をだまし取ったと逮捕された男性の判決が大分地裁でありました。裁判では、懲役1年6月(求刑・懲役2年6月)を言い渡しています。死亡届を提出すると年金の支給が停止され、生活ができなくなることが背景にあるとしつつ、裁判官は「利欲的な意思決定は強い非難を免れない」と述べています。
このような年金の不正受給は後を絶たず、今後、年を追うごとに8050問題に直面するケースは増え、問題は深刻化するという専門家も。
事態が深刻化する前に、社会や個人ができることは? まず、国や自治体の支援を知り、利用することが第一歩です。全国に設置されている「ひきこもり地域支援センター」では、本人や家族からの相談を受け付け、専門家がカウンセリングや適切な支援機関への橋渡しを行っています。また、各市区町村の福祉担当課や社会福祉協議会も、生活困窮に関する相談の窓口です。「生活困窮者自立支援制度」に基づき、家計相談や就労準備支援など、個々の状況に合わせた多角的なサポートを受けることができます。
こうした公的な支援に加え、当事者自身が孤立しないことが何よりも重要です。「家の恥」「世間体が悪い」といった思いから、問題を親子だけで抱え込んでしまうことが、事態を最も悪化させます。親も子も、まずは勇気を出して外部に助けを求めることが、解決への第一歩となります。第三者が介入することで、こじれてしまった親子関係が改善に向かったり、客観的な視点から新たな解決策が見つかったりすることも少なくありません。
そして最も大切なのは、「8050」に陥る前の予防です。親が70代、子が40代の「7040」の段階から、親子が将来について話し合う機会を持つことが望まれます。「親が亡くなったあと、どう生活していくのか」「親の介護が必要になったらどうするのか」といった現実的な問題をタブーにせず、お互いのライフプランやお金の話を冷静に共有しておくことが、いざというときの共倒れを防ぎます。
[参考資料]
厚生労働省『ひきこもり支援施策について』