子どもが希望していた大学に進学。何とも喜ばしい瞬間ですが、ときに家計を揺るがす大きな転換点になることも。自身の老後も考え始める50代にとって、想定外の教育費は深刻な問題。「子の夢」と「老後の安定」……天秤にかけたとき、何が起きるのでしょうか?
パパ、ありがとう!でもね…月収80万円・55歳エリート部長、ひとり娘「大学合格」に涙だったが…家族旅行で知った「まさかの真実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

エリート部長の涙…ひとり娘の大学合格が輝かしい未来の始まりのはずだった

都内の閑静な住宅街に妻とひとり娘の3人で暮らしている、大手メーカーで部長職を務める萩原健介さん(55歳・仮名)。月収はおよそ80万円。周囲からはエリートサラリーマンといわれ、これまで仕事一筋で家族を支えてきました。そんな健介さんにとって今年一番の喜びは、ひとり娘の未来さん(19歳・仮名)が、かねてより志望していた難関私立大学に合格したことだったといいます。

 

「娘が生まれたときから、教育だけはしっかり受けさせてやりたいと夫婦で話していました。妻の協力もあって、塾の送り迎えから学費の捻出まで、必死でやってきましたから。中学生のころから目指していた大学の合格を知らされたときは、娘が夢を叶えたことと、これでようやく肩の荷が下りるとの思いから、思わず涙がこぼれましたね」

 

健介さんは当時をそう振り返ります。これまでの苦労がすべて報われた瞬間でした。早速、合格祝いを兼ねて、少し奮発した家族旅行に出かけました。宿泊は、世界的にも有名な超一流ホテル。美味しい料理に舌鼓を打ち、親子水入らずで語り合いました。健介さんにとって、それはそれは幸せな時間だったといいます。

 

しかし、旅行最終日の夜に大どんでん返しが訪れます。

 

「パパ、今まで本当にありがとう。大学も、パパとママが応援してくれたから合格できたと思ってる。でもね……」

 

大粒の涙をこぼしながら、続く言葉に健介さんは耳を疑いました。

 

「合格した大学、やっぱりいけない」

 

予想だにしない娘の告白に、健介さんは言葉を失います。なぜ、あれほど入りたがっていた大学を? 混乱する健介さんに、未来さんは堰を切ったように話し始めました。

 

「本当は、高校生のころから大学は海外に行きたいと思っていた。でも、パパに負担をかけたくなくて言い出せなかった。日本の大学に合格したら気持ちも落ち着くかと思ったけど……やっぱり諦めきれなくて」

 

実は母親には相談済みで、だいぶ前から対策を進め、すでに希望する大学へ願書も提出しているというのです。自分だけが知らされていなかった。その事実に、健介さんは喜びの絶頂から一気に突き落とされたような感覚に陥りました。娘の夢を応援したい気持ちと、裏切られたような寂しさで、しばらく言葉が出なかったといいます。