「史上最低金利」の時代にマイホームの夢を叶えた人々。その多くが、最も返済額の低い変動金利を選びました。しかし、金利が上昇する今、その選択がライフプランそのものを脅かすリスクに変わりつつあります。本記事ではAさんの事例とともに、金利上昇時代の住宅ローンについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
また、銀行から通知が来た…「変動金利」を選んだ年収1,000万円・40代夫婦の後悔。住宅ローン「1,000万円利息増」までのカウントダウン【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

忘れがちな2つの重要ルール

Aさん夫婦が筆者のもとへ相談に来られたとき、2人とも5年ルールのことをすっかり忘れていました。

 

「内訳の金利部分が上がったのに、返済額も上がるんですか? 返済額は変わらず、利息の割合だけが変わるものだと思っていました」と、とても驚かれていました。金融機関から契約時には説明があったはずですが、「まさか本当に金利が上がるなんて」という気持ちから、あまり記憶に残っていなかったようです。

 

返済額が変わらず、利息部分が上がるということは、元金部分が減ってしまいますから、返済の先送りになってしまいます。そのため、いつかはこの先送りされた部分を返済していかないといけません。

 

さらに、変動金利型ローンにはもう一つ、「125%ルール」というものがあります。これは、5年ルール同様、急な返済額アップは家計に影響が大きく、返済に困る家庭も増えるため、5年後の返済額見直しの際に、それまでの返済額の1.25倍を上限とするルールです。つまり、125%ルールが適用されるほどの金利上昇があった場合、次の5年後(10年後)の返済額は、さらに大きくアップする可能性があるのです。

 

なお、金融機関によって、5年ルールや125%ルールを採用していない変動金利型ローンもありますので、ご注意ください。

 

金利2%時代をシミュレーション

将来の金利の動向を予測することは難しいので、「もし、こうなったら?」というシナリオをご自身で立てて、数字で未来を「見える化」しておくことが大切です。そこで、Aさん夫婦と一緒に「将来、いつ、どのくらい金利が上昇するか?」を話し合って、今後の金利の動きを次のように予想してみました。

 

借入金:4,000万円  

当初金利:0.525%

返済期間:35年(元利均等返済・ボーナス返済なし)

 

<これまでの金利上昇経緯>

借入れから2年後:0.675%

2年半後:0.925%

 

<今後の金利上昇予想>

借入れから3年半後:1.425%

4年後: 1.675%

5年後: 2.000%

 

金利予想は人によって違いますが、このシミュレーションに基づくと、5年ルールの猶予が終了したときの返済額は、13万346円となります。しかし、この金額は125%ルールが適用された金額です。つまり、以前の金額の1.25倍で抑えられていますので、5年後、さらに返済額はアップすることに。次の5年後の返済金額は、13万4,749円にアップします。

 

この返済額が、ローン完済まで続くことになります。Aさんの住宅ローン完済の年齢は、75歳です。金利の動向は老後の生活まで影響することがわかります。