世間的にも離婚に対する抵抗感は薄くなりつつあるものの、離婚は結婚の何倍もの労力が必要と聞きます。人の気持ちほどやっかいなものはなく、一度こじれてしまうと長い間、負の感情をかかえたまま苦しい結婚生活となってしまうこともあるようです。そこでもめるのが「財産分与」の問題。今回は熟年離婚にいたったある夫婦の事例をもとに、離婚する夫婦の金銭事情のリアルをみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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離婚時にもめる「財産分与」の考え方
離婚の際、もめる要因のひとつが財産分与です。財産分与には
1.夫婦が共同生活の中で形成した財産の公平な分配
2.離婚後の生活保障
3.離婚の原因を作ったことへの損害賠償
という3つの性質がありますが、基本は1の「公平な分配」であると考えられています。
分与の対象となるのは、名義に関係なく婚姻期間中に形成された動産、不動産を含めたすべての財産です。
実際の財産分与の額は当事者間での合意が基本となりますが、当事者同士の協議ができない、または、難航する場合には家庭裁判所へ調停や審判を申し立てることができます。
ちなみに、財産分与は離婚後に請求することも可能です。2024年5月に成立した改正民法により財産分与の請求期限がこれまでの2年から5年に延長されることが決定しました。施行日は公布から2年以内と決まっていますが、現在(2025年10月)のところまだ施行されていません。なお、離婚時の年金分割についても、請求期限が2年から5年に延長される見込みです。
離婚後に直面するお金の問題は、年齢を重ねているほどシビアになります。離婚の決断をする前に、その後の生活費など資金面の計画をしておかなければ、いざ離婚したあとに「こんなはずではなかった」と後悔しかねません。
「もういいでしょう」…58歳男性の妻に対する率直な思い
「もう、とっくの昔に結婚生活は破綻してたんですよね……」
自嘲気味に笑うのは、前園則正さん(仮名:58歳)です。
則正さん「もとはといえば、わたしが悪いのかもしれませんが……。でも、もういいでしょう。この先の人生は自分のために生きようと思います」