世間的にも離婚に対する抵抗感は薄くなりつつあるものの、離婚は結婚の何倍もの労力が必要と聞きます。人の気持ちほどやっかいなものはなく、一度こじれてしまうと長い間、負の感情をかかえたまま苦しい結婚生活となってしまうこともあるようです。そこでもめるのが「財産分与」の問題。今回は熟年離婚にいたったある夫婦の事例をもとに、離婚する夫婦の金銭事情のリアルをみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
母さんの自業自得だよ…「自宅」と「現金1,000万円」を勝ち取って離婚した54歳・専業主婦、自由と引き換えに失った“大きすぎる代償”に呆然【CFPの助言】
則正さんが「離婚」を決意した理由
則正さんと専業主婦の妻・清美さん(仮名:54歳)は、結婚生活30年の夫婦です。住宅ローンは2年前に完済、末子も家を出て一人暮らしを始めました。世間的には、ここから夫婦二人で悠々自適な生活を送るタイミングなのでしょうが、則正さんにそんな気持ちはありません。
実は則正さん、とある理由から「末子が独り立ちしたら離婚する」と心に決めていたのです。
則正さんと清美さんは職場で知り合い、1年間の交際の末結婚。当初は仲良くやっていましたが、25年前(結婚5年目)に則正さんがしてしまった一度の不貞行為によって、徐々に修復不可能な状況に発展していきます。
清美さんに不貞行為を知られた際、則正さんは土下座して謝りました。しかし、清美さんは聞く耳持たず、相手方に慰謝料を請求。相手の女性から数十万の慰謝料をとり、則正さんからも慰謝料という名目で100万円を自分の口座に振り込ませました。
ところが、これで一件落着とはいきません。もともとお金に執着しているところのある清美さんは、それ以降「帰りが遅い」「トイレ掃除をしていない」など、自分の意にそぐわないことがあるたびに「罰金」と称し、則正さんに恐喝まがいの金銭要求を行うようになりました。清美さんはそのお金で派手に遊びます。
そして則正さんがなにか言おうものなら、過去の不貞行為を持ち出して攻め立てます。精神的に追い込まれていった則正さんは何度も「離婚」を切り出しますが、そのたびに「アンタから離婚を申し出る権限はない」と一蹴。
則正さんは、日常的に罵詈雑言を浴びせられながらも「もとはといえば自分に非がある。子どもたちと生活できるなら我慢しよう」と心に決めて結婚生活を送っていたのでした。
離婚の決定打
しかし、20年前のある日、ささいなことからはじまった口ゲンカで清美さんが発した
「アンタみたいな人間を育てた親もクズだし、友達もクズ。まともなのは私だけ」
という言葉を聞いた時、則正さんは“体中の熱が引いていく感覚”に襲われました。
そしてこのとき、「この人間と一生一緒にいるのは無理だ」と確信したといいます。
こうした経緯から、子どもが独立したいま、則正さんは強い決意をもって「離婚してくれ」と切り出したのでした。