元旦の悲劇

よく晴れた元日の朝のこと。山下香澄さん(仮名・54歳)は、緊張した面持ちでリビングのソファに座っていました。

約1時間後、夫の晴喜さん(仮名・59歳)が起きてきました。

リビングに現れた夫に対して、香澄さんは開口一番こう告げます。

「あけましておめでとう。あなた、離婚してください」

あまりに突然の離婚宣告に、硬直する晴喜さん。寝起きのため頭も回らず、呆然とします。

我に返った晴喜さんは、「な、なんだ、新年早々ふざけてるのか?」と応じるのがやっと。

一体、この夫婦になにがあったのでしょうか。

香澄さんが離婚を決めた理由

晴喜さんは、多くの部下を抱える年収1,500万円のエリートです。職場では慕われているようでしたが、家では「亭主関白」を絵に描いたような人でした。

香澄さんが晴喜さんになにか意見しようものなら

「誰のおかげでこの暮らしができていると思っているんだ」

「いやなら出て行ってもいいんだぞ。困るのはお前だからな」

夫の口から何度も聞いた言葉です。

そして、香澄さんが「この人とは暮らせない」と、晴喜さんを見限ったきっかけも、彼の発言にありました。

数年前のある朝。その日、香澄さんは朝から体調不良に悩まされていました。

なんとか家事を済ませた香澄さんでしたが、午後にはめまいがひどくなり、台所に立つことができない状態に。そのため子どもに総菜を買ってくるように頼み、夕食の準備を整えます。

そして夜、帰宅した晴喜さんが、リビングのソファで横になる香澄さんを横目に、開口一番こう言ったのです。

「おい帰ったぞ。なに寝てるんだ」

「ちょっと今日、体調が悪くて……」

「えっ、なんで? お前、家にいるだけじゃないか」