高収入であれば家計はラクと思われがちですが、むしろ、収入が多いからこそ陥りやすい支出構造の「罠」が存在します。一見、何不自由なく暮らしているように見える家庭が、なぜ「生活がカツカツ」なのか……知られざる家計の内実をみていきます。
「年収1,500万円でも貯金はほぼできません」…高収入でもカツカツ、〈40代共働き夫婦〉の知られざる家計簿 (※写真はイメージです/PIXTA)

高収入なのに…世帯年収1,500万円でも生活苦の現実

IT企業に勤める高岡健一さん(仮名・45歳)は、都内近郊の分譲マンションで、大手製薬会社で働く妻の優子さん(仮名・43歳)、中学2年生の長男、小学6年生の長女の4人で暮らしている。世帯年収は1,500万円を超え、「周囲からは『共働きだから安泰だね』と言われます」と健一さんは話しますが、「恥ずかしながら貯金はほぼできていません」と打ち明けます。

 

「確かに、年収だけを見ればそう思われるのも無理はありません。しかし、実態は火の車。毎月、給料が振り込まれてもほとんど消えてしまう。それが現実です」

 

月収は手取りで80万円ほど。家計を最も圧泊しているのは、まず2人の子どもにかかる教育費。夫婦は「子どもたちの将来の選択肢を広げたい」との思いから、2人を私立中学に通わせることを決断しました。しかし、その学費や塾、習い事の費用は想像以上に重く、月25万円もの出費になっています。

 

「もちろん、覚悟のうえでの選択でした。ですが、それに加えて10年前に購入したマンションの住宅ローン返済が重くのしかかります。都心へのアクセスも考え、少し無理をして購入したのですが、ローンの終わりはまだ見えません」

 

ローン返済は月23万円。さらに数年前からは、新たな負担が加わりました。地方に住む互いの両親、4人分の介護費用の一部を、兄弟姉妹で分担して仕送りすることになったのです。

 

「終活の一環で、お互いの実家を処分して、両親ともに施設に入りました。1人あたりはそれほどではありませんが、4人分となると負担は決して小さくありません」

 

4人分で月12万円。さらに昨今の物価高騰のなか、マンションの管理費まで上昇。思ったほど手取りは増えず、上昇分をカバーできずにいるといいます。以前は月5万~10万円ほどを貯金に回していましたが、落ち着いて家計を見直す時間もなく、後手に回ってしまっています。

 

「食費に水道光熱費、通信費、保険料……色々と見直したら貯金できそうですが、今は余裕がなくて」