親の介護、お金の管理、そして相続のこと──。誰もがいつかは直面する問題だとわかっていても、親子で正面から話し合うのは、なかなか難しいもの。しかし、その「聞きづらい」「話しづらい」という遠慮が、いざという時に家族を大きな混乱に陥れる原因になりかねない。旦木瑞穂氏『しなくていい介護』(朝日新聞出版)より、相川家の事例をを通じ、親が元気なうちに行う「家族会議」の重要性を説く。
本当は資産9000万円だが…老人ホーム費用を賄うため、40代娘が預金額を訊くと途端、不機嫌になる73歳父。一転、沈黙を破ったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

親の生前整理は“いいことづくめ”

この話し合いの後、相川さんたちは、両親と相川さん家族、妹家族全員で、温泉旅行に出かけた。娘2人が嫁いでから、一度も揃って旅行に行ったことがなく、今まで口にはしなかったが、孫も含めて旅行に行くことが父親の夢だったという。

 

家族だけでお金の話をしようとすると、感情的になりやすく、うまくいかないケースは少なくない。そんな時は、間に専門家に入ってもらうのも一つの手だ。

 

親が元気なうちに親の資産状況を把握し、親が老後をどんなふうに考えているかを把握しておくことは、子ども世代にとっては大きな安心につながる。結果、親子の信頼関係が良くなるだけでなく、親は助けを求めやすくなり、子はサポートをしやすくなる。親の生前整理を促すことは、子ども世代にとってメリットしかないと言っても過言ではない。

 

 

旦木 瑞穂

ノンフィクションライター/グラフィックデザイナー